2009年09月29日

音波

sonicyouth.jpg
SONIC YOUTH/SONIC YOUTH(NEUTRAL)/1982

ソニック・ユースというバンドを知ったのは、ジム・オルークがメンバーとして加わった時(現在は脱退)。つまりごく最近のことだし、私のようなロック部外者が説明するまでもなく、ソニック・ユースは大ベテランの人気ロックバンドである(グランジって言うの?)。先日ブックオフでファースト・アルバムの再発CD(780円)を見つけたので聴いてみた。オリジナルの全5曲に8曲のボーナストラックが追加されているそうだ。
沈み込むような無機質なビートに、ほとんどノイズと言っていいギターのカッティングがからむ。反復されるシンプルなベースのリフ。巻き上がる黒雲のような不穏な電子ノイズが辺りに広がり、調子っぱずれのボーカルが稲妻のようにひらめく「バーニング・スピアー」。

2コードを往復する「アイ・ドリームド・アイ・ドリーム」はエレクトリック・ギターのゆらめくようなカッティングが幻想的だ。儚げでつぶやくような女声(キム・ゴードン?)をよく聴くと「シット」だの「ファック」だの、なかなか挑発的でグッと来るね。

パラパラとパーカッション風のドラム・パターンとベースのハーモニクスがどこかユーモラスな佇まいの「シー・イズ・ノット・アローン」。遠くの精神病棟から響いてくるようなシャウトに、どこか得体の知れない恐怖を覚える。ひたすらワンコードで押す「患者たちの踊り」は暗いようで実はバカみたいに明るいのだ。

タムを目いっぱい活用した複雑かつダンサブルなリズムが小気味良い「アイ・ドント・ウォント・トゥ・プッシュ・イット」。ノイジーなギターが縦横無尽に駆け巡り、やはり狂気に満ちたサーストン・ムーアのシャウトに身震いする。アルバム全体に言えることだが、ストイックな演奏とボーカルの狂気の取り合せは、ブリジット・フォンテーヌの『ラジオのように』を思わせる。

オリジナル・アルバムの最後に置かれた「グッド・アンド・バッド」も、重たいリズムを延々と反復するミニマル・アンビエントから始まる。なまくらのカミソリで強引に体毛を剃られているような不快なギター・リフも、しつこく繰り返されると次第に快感へと変化していく。5分半あたりから自然発生する妙にポップなリフが、連打されるシンバルとノイズに侵食されていくエンディングがカッコいい。

6曲目から12曲目は、前年(1981年)に行われた未発表ライブ音源が収録されている。あまり音は良くないが、ライブだけにより生々しい迫力がある。テープ起しのヒスノイズが、かえって当時のNYアンダーグラウンドの息遣いを伝えているようだ。「バーニング・スピアー」と「シー・イズ・ノット・アローン」も演奏されていて、より退廃的で自堕落な空気を醸し出しているのがすばらしい。

カッコいいのは間違いないんだけど、こういうのは説明するのが難しいね。ちょっと気の利いたことを言ってやろうとすると、全部ウソ臭く思えてくる。芸術志向の美大生なんかが陥りがちな、露悪的なデタラメ発露とは違う、妙な説得力がある。グレン・ブランカの『レッスンNo.1』にハマッたことがある私には、ささくれ立ったミニマル音楽として興味深く聴けた。

THE BURNING SPEAR(3:24)/I DREAMED I DREAM(5:14)/SHE IS NOT ALONE(4:02)/I DON'T WANT TO PUSH IT(3:31)/THE GOOD AND THE BAD(7:49)
HARD WORK(3:19)/WHERE THE RED FERN GROWS(5:47)/THE BURNING SPEAR(3:23)/COSMOPOLITAN GIRL(3:35)/LOUD AND SOFT(6:48)/DESTRYER(5:32)/SHE IS NOT ALONE(3:29)
WHERE THE RED FERN GROWS(6:45)


これはちょっと美大生チックだが、つまらないフリージャズより、よっぽどカッコいい。


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posted by やきとり at 01:32| Comment(6) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
わお、やきとりさんのブログにSonic Youthでびっくり。
と言ってもわたしの方は"goo"とか"Dirty"あたりのそれこそ「グランジ」時代のややポップで聴きやすく(笑)なった頃のしか知らないんですけど。
サーストンとキム姉さん、カッコイイ夫婦ですねぇ。もう十年以上も前ですが、サーストンが四天王寺の朝市でモンキーズのドーナツ盤を買っているのを見かけました(笑)。
Posted by みなみ虫 at 2009年09月29日 09:37
オイラの若いころは、「グランジ」なんてなかったよ。

世の中「サイケ」がすべてでした。
1967年のソフト・マシーンのライブがYOU TUBEにありました。
http://www.youtube.com/watch?v=gETYS-sNI9E&feature=related
Posted by natunohi69 at 2009年09月29日 21:59
サーストン・ムーアとキム・ゴードンって夫婦だったんですか。知らんかったです。さすがは元ロック者! このこの! ところでソフトロックは私もちょっとハマりました。

SYRから出ている「不穏」なアルバムは何枚か聴いていますが、本体のソニク・ユースは初めて聴きました。それにしても日本でわざわざモンキースの7インチ買ってるって、すげーパンクですな。
Posted by やきとり at 2009年09月29日 22:02
ややや、師匠も黙っていませんか。えーとソフトマシーンは有名な「3」を最初に聴いてピンと来なくて、「4」「5」の2in1のCDを聴いて「おっフリージャズ。カッコいいじゃん」という感じで一時ハマりました(と言っても10数年前の話ですが)。

その後「なんかこれ様式フリーだなあ。これ聴くならアイラー聴いてた方がいいなあ」となり、改めて「3」を聴き返したらロバート・ワイアットのボーカルの良さに目覚め、以降「3」は愛聴盤です。

「1」と「2」は聴いたことないんですよねー。あのボーカルの人(名前失念)がいた初期のソフトってサイケらしいですな。あとマイク・ラトリッジって昔の深町純にソックリです。
Posted by やきとり at 2009年09月29日 22:18
最初期のベース兼ボーカルのKevin Ayersのことですね。

http://www.iris.dti.ne.jp/~yutayuta/ka/index.htm

Posted by natunohi69 at 2009年09月30日 10:07
そうそう、ケヴィン・エアーズでした。失礼ながらまだ活動していたんですね。ファンサイトのアルバム解説を読むと、ひしひしとエアーズ愛が伝わってきます。
Posted by やきとり at 2009年09月30日 22:08
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