2010年02月19日

公約

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LUSH LIFE/JOHN COLTRANE(Prestige)/1958

ここは音楽の感想文ブログでございます。これから5回連続で音楽の話だけをしてみたいと思います・・・というような事を先日書いたらすぐに頓挫してしまったので、今回はマニフェストとして皆様にお約束いたします。

プレスティッジ時代のコルトレーンは面白くないよ。下宿に押しかけては私に強引にフリージャズを聴かせ続けた友人Mが、学生時代によく言っていた。ちなみに彼の当時のフェイバリットはインパルスの『オム』(火事に見舞われた動物園にマイクを持ち込んで実況録音したようなアルバム)である。その呪縛があるせいか知らないが、今までプレスティッジ時代のコルトレーンを聴かないまま、この歳になってしまった。

幸いなことに、現在では1000円以下で音質の良い輸入盤が購入できるようになった。気まぐれで本盤を聴く気になったのは、前半(A面)がサックス・トリオの演奏だからだ。フリーの極北まで行き着いた最晩年でも、バンドからピアニストを外さなかったコルトレーンが、まだ未完成だった時代にピアノレスの録音を残していたことに驚く。

まずはスタンダードの「ライク・サムワン・イン・ラブ」。短い無伴奏ソロのイントロで、すぐにそれと分る音色はこの時代に完成している。やがてスローテンポのフォービートが始まり、コルトレーンは手探りで音を捉えようと慎重に歩を進めていく。晩年のマグマが噴出するような音の奔流こそ望めないが、発展途上、温厚誠実、生真面目などと言った言葉が頭をよぎる5分足らずの短い演奏。まずは慣らし運転だろう。

アート・テーラーが繰り出すアフロリズムのイントロが印象的だが、すぐにフォービートに乗って馴染みのメロディが出る「アイ・ラブ・ユー」。アドリブ・パートに来ると、少しだけ荒々しくメロディを綴っていくも、やはりまだちょっとまどろっこしい。息の長いフレーズに挑戦するも、途中でポキリと折れてしまうのだ。それでも尋常ではない一瞬の閃きを見せる場面もあって、なかなか味わい深いプレイだ。

トリオでの最後の演奏はオリジナルのブルース。モケナカメケサケバホーーと吹きたいところを、モケナカメ、メ、プップーと、やはり突き抜けることが出来ない様子が伺われるが、途上を聴く楽しさはあるか。たとえば完成前の「東京スカイツリー」を見学する楽しみに似ている。うーんちょっと違うな。いずれの曲も6分以内の演奏で、同時期のトリオ作『ヴィレッジ・ヴァンガード』で長尺の曲をバリバリ吹き倒すロリンズの域にはまだ遠く及ばない。

後半2曲は別のベースとドラムスに入れ替わり、さらにレッド・ガーランドのピアノが加わる。タイトル曲の「ラッシュ・ライフ」はオーソドックスなバラード演奏。この曲だけに参加しているドナルド・バードのトランペットがやはり光る。最後の「アイ・ヒア・ア・ラプソディ」はワンホーンでバリバリと吹く。コルトレーンは本作で一番流暢なプレイを聴かせるが、これまたオーソドックスなハードバップである。

前半の発展途上のまどろっこしさを愛でるか、後半のフツーのジャズ演奏を楽しむか。あらゆる聴き方があるアルバムで、思った以上に楽しめた。

LIKE SOMEONE IN LOVE(4:57)/I LOVE YOU(5:29)/TRANE'S SLO BLUES(6:01)/LUSH LIFE(13:53)/I HEAR RHAPSODY(5:58)


(本作から7年後に至った静謐の境地)


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posted by やきとり at 00:31| Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
購入当時は嫌いでしたが、今となっては結構お気に入りです。加齢ですか、、、親方の髪の毛は未だ安全地帯ですか、それとも、、、
Posted by あれ、これは私の初JC音楽です at 2010年02月19日 16:04
コレ、地味ですからねえ。こういうのを、しつこく撫でたりさすったりして「いひひひ」と楽しめるようになったのは、確かに加齢効果かもしれません。あと髪の話は禁止da・yo!
Posted by やきとり at 2010年02月19日 23:31
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