2010年06月07日

夜のダサ夫

私はキャバクラが苦手である。なぜならダサ夫だからだ。久しぶりに旧友が集まって居酒屋でイッパイやるとする。2軒目を出る頃にはみんな上機嫌で、たいてい誰かが「女の子いるとこ行こうぜ」などと言い出す。さらに迷惑なことに「この辺りだと、俺が知ってる店あるぞ」と応じるやつが出る。直ちに「おう、そこ行こ、そこ」と炎が広がりを見せる。私は大慌てで「その前にさ、もう少し飲もうぜ」と1人火消しに奔走するも、「なにー? そんなに飲みたきゃキャバクラで飲めよ」と、こうなったらもう焼け石に水である。

キャバクラとは20歳前後の女性が隣に座って水割りを作ったりタバコに火をつけてくれたり、とにかくあれこれ世話をやいてくれる店である。それよりも会話を楽しむのがメインの目的だそうだ。しかし私は倍近く歳の離れた女性と何を話せばいいのか分らない。非日常的空間に幽閉されて脳内受信機も機能を停止してしまう。頭にすっかり血が上って血圧と心拍数も上昇する。立て続けにスパスパとタバコを吸い、ゴクゴクとウーロンハイを飲んでみるが気分は落ち着かない。グラスが空くとすぐに酒を作ってくれる親切な女性に礼を言いながら、何か話さなくてはいけないと考えただけで、さらに脈拍が上昇する。

私が途方に暮れていると、向いの席で女性の肩に手を回している友人が、大きな声で「盛り上がってないじゃん」と余計なことを言ってくる。すると私の横の女性が友人に向って「こちら、おとなしい方ですね」と笑顔を返す。こうなったら終りだ。頭は真っ白になり、俺はダサ夫だからこういう美しい女性のいる店に来てはいけないのだ、ダサ夫はアパートで厚揚げ煮を食いながら紙パックの日本酒を飲んでいるのが分相応なのだ、ダサ夫は外を歩いてはいけないのだ、ダサ夫は死ねばいいのに・・・とセルフ・ツイート垂れ流し状態に陥ってしまう。もちろん誰もフォローする者はいない。ダサ夫は石になって時間をやりすごそうとする。女性は困惑した様子で、それでも黙ったまませっせと酒を作ってくれる。

すると女性が「ちょっと失礼しまーす」と言って席を外したので、私は少し落ち着くことができた。周囲を見渡すと友人たちはそれぞれ隣の女性とのおしゃべりに夢中だ。私は自分が完全に無視されている状況に安心して、念のため向いの友人に「そろそろ帰ろうぜ」と提案してみるが、「ばーか、まだ30分も経ってねえよ」と直ちに却下される。仕方なくチビチビとウーロンハイを飲み続ける私。すると「こんばんはー」とさっきとは別の女性が私の横に座るではないか。さっきの女性より少し年上で、25歳から30歳くらいだろうか。落ち着いた物腰にベテランの風格を感じるが、若い女性であることに変りはない。下がりかけた血圧が再び急上昇する。何をされるのだろうか。

女性が「○○を頂いていいですか?」と私の耳もとで囁くので、○○の部分はよく聞こえなかったが、「どうぞどうぞ」と応じる私。手馴れた様子でボーイを呼んで注文する女性。やがて茶色い液体が運ばれてくるが何だか分らない。分らないままカンパイを強要され、その女性は100点満点の笑顔を見せながら「あんまりこういう所に来ないんですか?」と砕けた感じで言う。「そうですねえ、ダサ夫ですから」とは言えず、「はあ、まあ」と応じる私。「苦手な場所に連れて来られちゃって大変ですね。お仕事は何をしていらっしゃるの?」と、今度の女性は矢継ぎ早やに会話の糸口を投げかけてくる。ははあ。このベテラン女性は、きっと私のような無粋な客が来た時に応対する係のようだ。すなわち「ダサ夫担当」、略して「ダサ担」である。

「フツーの会社員です」「大学の時の友達です」「たいてい毎晩、主に日本酒です」「西友で買いました」「ダービー? ですか? いやギャンブルは詳しくなくてすみません」「はあ、映画は観ません。申し訳ございません」ダサ夫の扱いには慣れているはずの女性だが、私のような重度のダサ夫、ダサ夫の中のダサ夫相手に苦戦を強いられ、とにかく会話が重い。東京地検の取調室で交わされる会話より重い。早くゲロして楽になりたい。むしろ豪快にゲロでも吐いて意識を失った方が楽である。冤罪被害者の気持ちが少しだけ理解できた。それでもどうにか2時間近くが経過して、ようやく私はキャバクラ様から解放された。私の苦労にまったく気づいていない友人たちは、「あの女サイアクだったぜ」とか「俺についた女より全然マシだよ」などと反省会&品評会に夢中だ。

そして翌日。目が覚めると膨大な数のツイットを私の脳内端末が受信していた。「ダサ夫、ちょー疲れるんだけど」「ダサ夫めんどくせえし」「ダサ夫は割増料金でいいんじゃね?」「ダサ夫はキャバクラよりもフーゾク行け」「ダサ夫はいますぐ死ね」するとあの「ダサ担」女性がツイットしてくれた。「お客様に対してそんなこと言っちゃダメよ」「そうですね。残念な人をバカにするのは良くないですよね」「そうよ。気の毒じゃないの」「そうですね。気の毒な人をバカにしちゃいけないですよね」「そうよ。あの人は生まれてきたことが気の毒なのよ」「それってちょー毒舌じゃないっすか! ちょーウケるんですけど!」ぼんやりとした頭で歯を磨きながらそれらのツイートをひとつひとつ丁寧に削除して、本日も仕事に出掛ける私であった。


posted by やきとり at 00:30| Comment(20) | TrackBack(1) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日本で会社勤めしていれば、お姉さんがつく御店は避けられない選択肢でしょう。好きな人は何故かハマるね。
会社勤めしていた頃に上司/友人と行った御店では、お嬢様の機嫌を損なわせないように接待している自分に気付き、なにしていたんだろうと自己再考していました。
多分、学生時分に就職した先輩に連れられたアジア系バーで目撃した状況がトラウマとなって素直に遊べないのか、と自己分析しています。
Posted by : ) at 2010年06月07日 05:16
苦手で良かったでっせ。あんなトコ得意つか好きになるとゼニがいくらあっても足りませぬ。
アタシはキライじゃないけど生来のセコ夫なんでヒトのゼニでしか行きません。そんな奇特な方は滅多に居ないんでここ5年ほど行ってませんが。
交流戦優勝はかもめーずで間違いないと思ってましたが黄色信号か?
Posted by ひまだ at 2010年06月07日 08:32
お久しぶりです。お久しぶりなのに何故よりによってここでコメントを残すのか? お気持ちを痛いほど察するからです。

ほんと堪忍してもらいたい2次会地獄。
針の筵、、、やがて女の子の表情も陰り無口になり、真っ暗な空間で一人ポツネンとうつ向くボクにスポットライトが照らされる。四方にうっすらと無数の人差し指がボクをさし、ヒソヒソ声が聞こえる、あれがダサ夫っていうのよ、ダサ夫? はじめてみたわ。珍しいでしょ。ダサ夫って希少種よ。そうよダサ夫よ、ダサ夫だわ、ダサ夫よね、、、ボクはいたたまれなず、うつむいたまま耳を塞ぎ目を閉じる。完全に光が閉ざされたまぶたの裏にはっきりとした女の子がボクを指さし笑いだす、、、キャハハ、クスクスクス、ダサ夫だわ、ダサ夫よ、笑い声と人差し指とヒソヒソ声の走馬灯、、、、ウギャー、苦痛にさらされた挙句の途方もない散財。

あれから7年かぁ〜(遠い目)

2次会にさそうツレがいなくなった今、迷惑かもしれませんがダサ友と呼ばさせて下さい。
Posted by どくた at 2010年06月07日 16:58
ごめん。若い娘っ子と話す機会もあまりないのでイキイキと会話してしまいます。
「どうせ客なんだから厭な顔もできめえ」と客の権威を傘にきて、「キャバ嬢が好むマンガのリサーチ」とかやってしまいます。やっぱNANAとかルーキーズでしたね。一度ひぐらしうみねこアニメゲーム大好きのガチオタナイスバディのキャバ嬢にあったときは逆にヒきましたが(話は盛り上がったけど)

後で「なんであんなこと根掘り葉掘り聞いてんの?オタクきめえ」とか言われてるのに1万メセタ。

フィリピンパブとかだと逆にママに同情されて、「DoXさんはいい人だからここの子たちお金かかるつかまっちゃだめよーう」とか言われて奢られたりする。何故だ、そんなに惨めに見えるのか、俺。
Posted by DoX at 2010年06月07日 18:07
やきとりさん
「東海林さだお」もかくや、と言うほどの名エッセイですね。
30代の頃、私もよく経験した修羅場を見るようで辛いですぞ。デジャヴのように甦る悪夢(笑)。

・・まあでも。
楽しげにお話している仲間の連中も、調子こいて口説いたりして、おねーちゃんに「オジサン、ナニ言ってんの?」と強烈な肘鉄を喰らわされて深く傷ついたりしてるんですよ。
Posted by something at 2010年06月07日 20:54
わたくしの場合主に東南アジア中国のおねいちゃん付きカラOKでした。
中国では時に出張者の通訳なども務めながら、場つなぎ隊長として一夜10曲はマストで歌い倒すのみだったので、わたくしに付いたおねいちゃんは楽でよかったと思います。
キャバクラはそういう逃げ場がないですもんねえ。
Posted by なめぴょん at 2010年06月07日 22:22
>mtx殿
まーねー、「ちょっと行きますか」みたいになるもんな。mtx殿が不参加だったいつぞやの高校の同窓会でもそういう流れになりました。mtx殿は実は気を遣うタイプだから、いまいち楽しめないんでしょうな。でもお嬢さん方にしてみれば、私みたいな客が一番メーワクなのは間違いないと思います。ところでアメリカにもキャバクラってあるの? ストリップバーのイメージが強いな。

>ひまださん
そうそう、カネがやたらと掛かるのも難点ですね。私の場合は言い出しっぺや羽振りの良い奴が払ってくれる場合が多かったけど、割り勘と言われた時はガッカリしましたよ。ロッテはますます「内弁慶」モードです。マリン以外では勝てない・・・このジンクスがペナントに戻ってからも続いたらと考えると夜も寝られません。寝るけど。

>どくたさん
ご愁傷様でございます。あのテンパリ感、お先真っ暗感、生れてすみません感は、ダサ夫でなければ理解できないナイーブなものですね。てゆうか「女とヨロシクやりやがって何が生れてすみませんだこのやろう」「太宰君も私に比べればまだまだ甘いな」などと、暗くウヒヒヒと笑う私でございます。ウヒヒヒ、ウヒヒヒ、ウヒヒヒ。

>DoX先生
おおおお、案の定DoX先生はイケる方でしたか。ちょっとくらいお触りされても明るく喋ってくれる客の方が、お嬢さん方もありがたいのは分っているんですけどねー。逆に私(や、どくたさん?)みたいな客が一番イヤでしょうね。今のマンガやアニメの話題に付いていけるのはスゴイなあ。今どき懐かしアニメの話をしても通じないだろうし・・・「このシャツ、西友で買ったんだ。350円だったんだよ!」という話でOKでしょうか?

>somethingさん
いえいえ、いつもの自意識過剰&被害妄想&やばい奴の戯言でございますよ。でもまあ確かに、特に熱心に女性と話し込んでいた奴が反省会で「あの女は相当アタマが悪かったな」などと言うのを聞くと、「すっぱいぶどう」(イソップ童話?)を思い出します。うん、そうなんだ。そうに違いない!

>なめぴょんセンパイ
おっ、さすがは宴会部長なめぴょん先生。カラOKがあれば、私も1〜2曲歌うのにはやぶさかでないのですが、キャバクラの場合は「トーク」1本勝負ですからね。カンケーないけど誰かが面白いこと言った時に、パチパチ拍手しながら笑う奴が嫌いです。あとカラOKボックスにおっさんだけで行くのも無粋ですね。でも昔おっさん4人とかで、しょっちゅう行ったけど。
Posted by やきとり at 2010年06月07日 22:46
自称ダサ夫の溜まり場はここですか?w
普天間基地は云々、とか、昨日のロッテは云々、とかって、ぶちかましてやればいいのに〜。

キャバクラと聞くと、キャバクラユニオンを思い浮かべてしまう私は、どこか間違っておりますでしょうか。キャバ嬢経験はありませんが、沈黙系より、調子こいて触ってくるヤツの方がイヤだと思うなー。「自分は面白いと勘違いしてて、キモイよね、あの客。もう来なくていいよ!」と閉店後に陰口叩かれてそう。てか、私だったら絶対言うw
Posted by みみず at 2010年06月07日 23:37
うわー草食系男子の地下サロンに、肉食系女子が乱入してきたー! みんな逃げろー!

とまあ冗談はさておき、ハアそんなもんですかねえ。じゃあ「お触り系」と「ロッテのチアガールのお姉さんのヘソをにやにやしながら撮影している系」では、どっちがキモイでしょうか。

とまあまあ冗談はさておき、キャバクラユニオンは面白かったです。もしもお嬢さん方がストを決行したら、店では管理職の恐いお兄さんが代理で接客するのかなあとか何とか。
Posted by やきとり at 2010年06月07日 23:55
ダサくたっていい、NOと言えるダサ夫に!

...なんてわけにはいかないんですかねー。でしょうねー(笑)。男の付き合いって、よくわかりませんが。そんなお金と時間の無駄、わたしなら絶対に帰ります(笑)。
Posted by みなみ虫 at 2010年06月08日 02:00
お互い昨夜はウヒャな試合でしたなー。時間差でウチはタイ記録だと。
実は去年燕に四球含む11打数連続安打のギネス記録ってのをかまされたんで(それをナマで見せられたのよ(;;)何としてもその記録を塗り替えて欲しかったんだけど、残念。
Posted by ひまだ@やっと5割復帰 at 2010年06月08日 08:44
>みなみ虫さん
私がいる時はずーっと居酒屋、私がいない時は最後はキャバクラと、2パターンのコースを使い分ける親切な人たちもいます。てゆうかそこまで気を遣わせる自分が、またイヤになるのですが(めんどくせえ男だな!)。聞くところによると大阪のキャバクラはさらにノリが良く、豪快に盛り上がっているそうです。私などが足を踏み入れたら、その場で卒倒&悶絶死必至でしょう。

>ひまださん
去年から「引き」が悪かったんですか?(笑) 昨年はロッテが23点、今年はオリが21点と、広島も災難続きですな。できれば自民党野球部をコテンパンにやっつけたいのですが、明日からの2連戦、よろしくお願いします。
Posted by やきとり at 2010年06月08日 10:33
明日は京セラに行きます。それだけで結果はわかるでしょ?
Posted by ひまだ@去年は観戦勝率ヨカッタのよ at 2010年06月08日 11:55
ダサ夫氏の取り調べは特捜よりキャバクラで(`∀´)(`∀´)(`∀´)
Posted by 「ダサ夫氏の優雅な生活」出版キボンヌ♪ at 2010年06月09日 11:18
>ひまださん
ここんとこ好調オリですから、そろそろ勝ち姿を拝めるんじゃないですか。本日は当方が広島をカモりにマリン詣での予定でしたが、こちらは雨なので微妙です。

>ひとのことはいいんだよ。さん
ギャーッ! 恐ろしい! すぐゲロしちゃいます。まあ私には有効ですが、こんな奴も出てきそうです。

容疑者:怖いものなんか無いよ。まあ強いて言えばキャバクラが怖い。

検察官:何? キャバクラ? よし、キャバクラで取り調べてやる。


エリカ:エリカでーす♪

容疑者:ギャーッ! 怖いー! お、いいお尻してるね。

アズサ:アズサでーす♪

容疑者:ギャーッ! 怖いー! すげえ爆乳だねえ。なにカップ?

検察官:おいおい、さっきからちっとも怖がってないじゃないか。本当は何が怖いんだ?

容疑者:あとはフルーツ盛合せが1杯こわい。
Posted by やきとり改め夜の帝王 at 2010年06月09日 11:51
あら雨なんすか。かもめーずが無双状態マエケンを打ち砕くのは明日までお預けですか。
さて。そろそろ現地に行ってきますノシ
Posted by ひまだ at 2010年06月09日 13:55
自民党野球部をやっつけられなくて残念でした。明日はお互いがんばりましょう。あと、やはり観戦前にお祓いをした方が・・・。
Posted by やきとり at 2010年06月09日 22:42
>じゃあ「お触り系」と「ロッテのチアガールのお姉さんのヘソをにやにやしながら撮影している系」では、どっちがキモイでしょうか。

お触り系の方が断然キモイに決まってるじゃないですかー!キモイというか怖い。トラウマに結びつく可能性も高いですからね。たとえ仕事と割り切っているつもりだったとしても。
にやにや撮影系は、直接の害がないですもん。ストーキングに利用したりしない限り、かわいいもんです。侵入される度合いが全く違う。

・・・つか、男子は、こんなこともわからないのか。orz

肉食系女子の私としては、罰にやきちゃんを焼肉に誘うことにする!頭から取って食うから、覚悟しとくように。
Posted by みみず at 2010年06月10日 07:43
うわー肉食系女子がまた乱入してきたー! みんな逃げろー!

思い返せば焼肉屋には10年近く行っておりません。ここしばらくは不景気続きで、肉を食うのはもっぱら松屋という体たらくでございます。まあ「焼肉欲」がめっきり減少したというのもありますが・・・それよりもマリンスタジアムに行きませんか? 一緒にニヤニヤしながらお姉さん方のヘソを撮影いたしましょう! 正々堂々と! 毅然とした態度で! 愛臍心を高揚させて!
Posted by やきとり at 2010年06月10日 11:33
あなたの観点を、私は非常に気分になります
Posted by 辻井 at 2013年07月10日 12:40
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ダサ夫氏のプチブル性を糾弾する
Excerpt: 驚いた。 南関東毒飲調粗の書記長にして、毒物探求界きっての左派論客である同志やきとりが、こともあろうにキャバクラで豪遊したという自慢話を誇らしげに延々と書き綴っているのだ。 そういうことなら私も自..
Weblog: 非国民研究開発
Tracked: 2010-06-11 05:29
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