2010年06月20日

りんご男

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RURAL STILL LIFE/TOM SCOTT(impulse!)/1969

トム・スコットといえば没個性のフュージョン・アルバムで没個性のサックスを吹いている人(偏見)というイメージが先行するが、この69年発表のセカンド・アルバムは時代を反映した硬派なジャズ、もしくはジャズロック作品であった。

いきなり強烈なジャズロック・ビートが切り込んでくる1曲目。よく聴くと7/4の変拍子だ。しゃくりあげるようなベースの変態リフに絡みつく、電気処理されてひしゃげたテナーサックスのメロディがいかにも怪しい。ノッケから不思議な煙がモウモウと立ち込めて頭がクラクラする。逆回転させたピアノのコードのイントロから、ハンコックの「スピーク・ライク・ア・チャイルド」を思わせる曲想の「ソング#1」が出る。最初は5拍子だと思っていたが途中でうまくカウントが取れない。やたらと入り組んだ複雑なビートだが、そんなことを考えなければひたすら穏やかで心地よい佳曲。

衝撃的なイントロとテーマで威圧する「フリーク・イン」は、ソロパートに入ると高速フォービートで疾走(と言っても5/4拍子だが)。途中からディレイマシンが掛かるスコットのテナーソロが、まるでエレキギターのように聴こえるのが面白い。まろびころびつ強引にスイングするリズム隊。ジャッキー・バイアードを彷彿とさせる、ビバップとブギウギを和えてフリージャズで炒めたようなマイク・ラングのピアノもすごい。まったく無名ながら相当な実力の持ち主と見た。エレクトリック・ピアノまで持ち出す後半のカオスがたまらない。

9拍子の「ウィズ・リスペクト・トゥ・コルトレーン」とは、これまたストレートなタイトルだが、淡々とした空気(モード)の中を自在に飛び回るスコットのソプラノサックスがいかにもだ。5曲目「ジャズ・メッシン・アラウンド」はストレートなメイジャー・ブルース。シンプルな曲ながらベース、ドラムス、ピアノが全力投球でスコットをプッシュする。メンバー全員が若手の白人だが、素晴らしい演奏家ばかりだと思う。いわゆる「お仕事」感は皆無。シンプルな曲調も、複雑なアレンジも、抜群のチームワークで聴き手をグイグイと引っ張っていく。

しかしながらラストの「ボディ・アンド・ソウル」はいたって普通だ。1曲くらいフツーにスタンダードでも演っておくか、という判断によるものだろう。だからと言って手を抜くようなことは無く、特に途中でややアップテンポに移ってからのピアノソロが良い。短いながらも野太い存在感を示すベースソロも聴きものだ。メロディを程好く崩しながら吹くスコットのソプラノサックスに何とも言えない滋味がある。勢いだけの若者ではないのだ。現在1100円の廉価(国内)盤が入手できます。

(このテーマを吹いているのはスッコトさんです)


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posted by やきとり at 17:30| Comment(5) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
同志焼鳥んひょひょぉぉぉっ!!
「Taxi Driver」軽いアレンジですねえ。エレピは無いだろ、と思いました。もっとねちっこく演れば渋い曲なのに。
Posted by 非国民 at 2010年06月21日 01:17
あやぁトム・スコットとは懐かしい。
リンゴ男聞いてリチャード・ティーが気に入っていっときハマってた若き頃を思い出したぜぃ
Posted by ひまだ at 2010年06月21日 07:51
>同志
常にクールな同志に慣れないことをやらせてしまって申し訳ございません。しかしこれを機会にキャラを変えてみるのも良いかもしれません。で、実際にはこの曲、エレピ(ローズ)が効果的なんですよね。

>ひまださん
他のミュージシャンに「スタッフ」のメンバーが多いんですよね。リチャード・ティーは良いですな。私見ではソロ名義よりサイドに回った時の方が良い作品が多いような気がします。明日は今年7勝1敗の私が、久しぶりにマリンに乗り込みます。もうしわけございません。
Posted by やきとり at 2010年06月21日 13:40
いっとき買うアルバム買うアルバム全てにティーさんかスティーブ・ガッドが参加してんじゃないの?状態でしたわん(一部誇張あり)アンタら仕事選べよなー。と勝手なことを思っておりました。
金曜日負け試合観に行って疫病神復活かと思ったら観に行かなくても3連敗だったんでアタシの所為じゃないのねと安堵・・・してる場合じゃねぇ〜。
明日からの3連戦も勝つ気しないんで好きなだけ勝ち試合堪能してきてくだされませ。
マーフィ嫁貼ってやろうかと思ってたらもうやられてた。手が速いぜ。
Posted by ひまだ at 2010年06月21日 14:22
一時はソウルやロックのオケのレコーディングに駆り出されていた人たちですからね。故にバンド名の「スタッフ」は少し自嘲が入っているそうです。それと明日の先発は小野じゃなくて吉見だったので、前言撤回します。T-岡田くんの良い餌食になりそう。それにしてもマーフィーの奥さんはちょっとエロ過ぎですね。
Posted by やきとり at 2010年06月22日 00:03
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