2010年08月18日

ちょっと恥ずかしい

makeupcity.jpg
MAKE UP CITY/CASIOPEA(Alfa)/1980

またフュージョンである。中学生の時はカシオペアに夢中だったが、実は今でもごくたまにコッソリと本作だけは聴いている。かれこれ30年近く聴き続けていることになる。ちょっと恥ずかしい。

さあ褒めるぞ。まず野呂一生の書く曲が素晴らしい。1曲目「ジプシー・ウィンド」はちょっと聴くとリー・リトナー風だが、メロディは完全に野呂節である。2曲目「アイズ・オブ・マインド」はシンセサイザーで塗り固められたノッペリとした上モノと、キビキビと動くリズムの対比が面白い。3曲目「リフレクション・オブ・ユー」は最近は鉄道マニアとして名を馳せる向谷実のオリジナル・バラード。心地よく揺らぐエレピに身をゆだねていると、感動的なサビのメロディが出てハッとなる。野呂の流麗なガットギター・ソロも含め、地味な曲ながら聴きどころ満載だ。A面の最後「リップル・ダンス」は再びリトナー風のアップテンポの佳曲。しかしこのあまりに無邪気なポップさは、今聴くとちょっと気恥ずかしいかも。

B面に返して6曲目「ライフ・ゲーム」は、これまた野呂節全開のアップテンポ曲。裏打ちリズムとオクターブ奏法で演奏されるメロディがとってもジャジー。途中で出るアコースティックピアノ・ソロの生々しい躍動感が素晴らしい。そしてタイトル曲「メイク・アップ・シティ」は軽快なシャッフル・リズムに乗って、これまた小粒なウェスみたいな野呂のオクターブ奏法が炸裂する。名曲。7曲目「パステル・シー」は桜井哲夫のオリジナル。おとなしいバラードだが、野呂のトレードマークと言っていいフレットレス・エレキギターのメロディが味わい深い。そして最後の「トゥインクル・ウィング」は私が一番好きな曲。間奏のフォービート・パートから、一気に弾ける「感動」のセカンド・テーマで泣け。

単純なスケールの昇降とは一線を画す野呂のギターソロは、さすがジョー・パスを研究し尽くしただけある。さらにほとんどの曲のエンディングがフュージョンの定番「フェイドアウト」ではなく、ライブのようにきっちり終わるのも良い。桜井哲夫のファンキーな高速チョッパーベース、神保彰の神業のようなハイハットの刻みから繰り出される16ビート(32ビートという説もある)も圧巻だ。ともすると「テクニックのひけらかし」に陥りがちなバンドだが、本作では「野呂の書いた曲の良さをいかにして最大限に引き出すか」という主題に忠実に演奏しているので好感が持てる。いつものあざとさや嫌味が無い。まあ童貞臭い音楽であることに違いはないので、やっぱりちょっと恥ずかしい。暑いのでカンベンしてください。何を?

Gypsy Wind(4:06)/Eyes Of Mind(5:55)/Reflections Of You(4:29)/Ripple Dance(4:58)/Life Game(5:00)/Make Up City(5:22)/Pastel Sea(4:10)/Twinkle Wing(5:20)
野呂一生(g)/向谷実(key)/桜井哲夫(b)/神保彰(ds)

(81年春頃の映像だそうです。司会は伊東ゆかり)


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posted by やきとり at 12:00| Comment(10) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
向谷実があんな姿になるとはこの時誰も知る由も無かった
Posted by ひまだ at 2010年08月18日 16:03
やきとりマスター、童貞を感じさせる音楽があるとすれば、放蕩者にふさわしい音楽って何でしょ。セルジュ・ゲンズブールとか、チェット・ベーカーとか。すんません、叱られますね。
ひまださん、コメントサンキューです。アドレス教えてくらはい。マスターごめんね、間借りして。あれはビック・ディッケンソンのショーケースですね。
Posted by クロコ at 2010年08月18日 19:09
やきとりさんがカシオペアを聞いていたとはw。
童貞臭い音楽に納得。高校生だった頃、バンドといえば、カシオペアのコピーかヘビーメタルでした。ヘビーメタルも童貞臭くはずかしいけど、当時はそっちへ流れてました。
81年当時からしゃべりが上手な向谷実さん、近頃はツイッターとUSTで大活躍。森高千里のプロデューサーの斉藤英夫さんやら中西圭三さんやらと曲作って配信したり、著作権問題を啓蒙したりされてます。
取り巻き連中が最近ハナについてきましたが。
Posted by presov2002 at 2010年08月18日 20:07
>ひまださん
それでもまあ鉄道ファンとして新たな生きる道を発見したというのは、それはそれで喜ばしいことでございますな。

>クロコさん
ヴィック・ディッケンソン! そうでした。そんな古いレコードを、アイラーと並べて置いてある辺りが渋いですなあ。放蕩者に似合う音楽ですか・・・ジャズだとやはりチェットでしょうねえ。目先を変えてエリス・レジーナとか、変化球だとハービー・マン?(笑)

>presov2002さん
確かに私の時もフュージョンとヘビメタでした。んで、たいてい仲が悪いんですよ。今から思えば、どちらも童貞臭い音楽のくせに(笑)。このアルバムと『ミント・ジャムス』『フォトグラフス』『ジャイブ・ジャイブ』はよく聴いてました。中学の時、タイムリーで初めて買ったLPが『ミント・ジャムス』でした。

カシオペアって解散したんでしたっけ? それにしても向谷氏はネットでも活躍してるのですか。さすがはメカオタク! 斉藤英夫と言えば松岡直也の『夏の旅』でギターを弾いてた人ですね。森高千里のプロデュースをやっていたとは知りませんでした。儲けやがったな(笑)。
Posted by やきとリ at 2010年08月18日 23:19
実は向谷実サンはCSのどっかのチャンネルで鉄オタ向け番組に出てるハゲデブのオモロイオッサン。としか思ってなかったんですね。そんなオッサンがカシオペアのキーボード奏者だったと知った時の驚きったら(ってほど大層なもんでもなかったけど)
さすが鉄オタミュージシャンだけあって、JRやら私鉄やらの発車メロディとか作曲して趣味と実益を両立させているのはご立派。
Posted by ほんのちょこっとだけ鉄オタひまだ at 2010年08月19日 09:12
私と逆ですね。まあ普通はそちらの順番で知るんですけどね(笑)。以前『タモリ倶楽部』に出演しているのを見て、出世したなあ(出世なのか?)と思ったものでした。発メロは確か関西の方の私鉄ですよね。TBSラジオ「ストリーム」という番組にキーボードを持ち込んで嬉しそうに披露しているのを聞いて、出世したなあ(これは間違いない)と思ったものでした。
Posted by やきとり at 2010年08月19日 11:30
伊東ゆかりがリタ・クーリッジかなんかのカヴァーで、当時の若者に人気があった頃ですなあ。
向谷さんはすでにハンドマイク持っていますな。今やテツオタの大家・川島令三さんとコンビだし。京阪電鉄の発メロを作曲したって自慢してました。

それでは、もう少し恥ずかしくなって貰いましょう。

http://www.youtube.com/watch?v=EOkQjI89qE4

Posted by something at 2010年08月19日 13:17
日比谷で数回行われた「クロスオーバー・ジャパン」ですね。かつて「高中の方がいい曲書くだろ」「でもミストーンだらけじゃん。野呂の方がギターは全然上手いよ」「テクニック至上主義は音楽を堕落させる」「レコードと同じソロを再生するだけじゃ、ライブを見に行く意味ないじゃん」「それだけ練り込まれたソロなんだよ」・・・などなど友人とギロンし、双方のファンでもあった私としては、いくら収入のためとはいえ安易な競演に応じてしまう2人の姿には複雑な思いでした(笑)。

で、この映像に関して言えばギターの分だけ、圧倒的に高中の方が残念度が高いですね。中学校の時の憧れや夢を見事に打ち砕いてくれましたよ♪
Posted by SG-やきとり at 2010年08月19日 17:14
中学時代からフュージョンですって!都会のナウな子供は違うな

自分は大工‥かーペンターず泊りだものさ
Posted by 介護員 at 2010年08月20日 21:41
いやいや80年初め頃は今と違ってインストがポピュラーで、ナベサダもカシオペアも高中もテレビCMに出ていて、認知度はずーっと高かったんですよ。で、小学校以来ずーっと好きで見ていた「ザ・ベストテン」が次第に下らなく思えてきて、後は大学までフュージョン小僧一筋でやらせて頂きました。ああ、恥ずかしい(笑)。
Posted by やきとり at 2010年08月20日 23:11
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