2010年08月30日

演歌ジャズ

jordan.jpg
FLIGHT TO JORDAN/DUKE JORDAN(bluenote)/1960

私の夏バテは食欲ではなく音楽聴取欲が減退する。ドシャメシャは鼓膜を上滑りして染みてこないし、イージーリスニングはエアコンの風と一緒で長時間あたっていると気力と体力を削がれる。そうだ。こういう時は演歌を聴こう。

短調の泣きのメロディを持つデューク・ジョーダンの曲を演奏するディジー・リース(tp)とスタンリー・タレンタイン(ts)というB級フロントのコンビは、地方のドサ回り営業がよく似合う。デューク・ジョーダンがブルーノートに残した唯一のアルバムは、下世話なまでに演歌なアルバムだ。


ピアノが臆面もなく直球マイナーコードを叩き込むイントロを経て、ガサガサしたマイナーメロディを遠慮会釈なくユニゾンで吹くフロントがムサ苦しい1曲目「フライト・トゥ・ジョーダン」から、ジャケのイメージ通りの黒と青だけの世界が噴出する。サビは普通に「アアーアッアア」とやればいいのに、あえて「ンアー、ンアンアアン」とコブシを回すので暑苦しさは倍増する。ん? 何言ってるか分らない? 聴けば分ってもらえるだろう。結論。男泣きの野太いフレーズをこれ見よがしに畳み掛けていくメロディ展開は、これすなわち北島三郎である。歌詞を付けてテーマを歌ってみよう。祭りだ、祭りだ、祭りだよ♪ おとーこ、まつーり♪

テナーのむせび泣くソロが弱った前立腺をジンジンと刺激するバラード「スターブライト」が次に来る。金色に光るリースのウォームなトランペット、かすれた音でしゃくりあげるようにヨヨヨと泣くタレンタインのテナー。こう書くとまるでニニ・ロッソとサム・テイラーの2管フロントのようだが、ムードミュージックに堕する1歩手前で踏み止まるバランス感覚が素晴らしい。結論。スローブルース「ディーコン・ジョー」についても同じことが言えるが、ジョーダンの書くねっとりとしたバラードはポップス演歌の帝王、堀内孝雄の世界に通じる(そうでもないか)。

黒光りする典型的なハードバップ「スクウォーキン」「スプリット・クイック」の2曲は、女子供を寄せつけないゴツゴツした手触りの無骨なメロディが、まるで安焼酎のコーラ割りをあおっているようなB級テイストの味わい。あまり飲み過ぎると翌日の漁に響くのは分っているのだが、海の男たちの酒盛りは止まるところを知らない。激しく上下するギクシャクしたメロディの動きは、荒波を切り裂いて進む漁船のようだ。ここで結論。そう、これは完全に鳥羽一郎の世界なのである(そうか?)。


そしてラストはジョーダンの代表曲「シ・ジョヤ」が来る。別名「危険な関係のブルース」として知られるこれまた暑苦しい曲だが、ここではアフロリズムを駆使してさらにねちっこく盛り上げる。猛暑日にエアコンの壊れたカラオケスナックに監禁されて、延々とトーチソングを聴かされている感じか。もちろんドリンクはウィスキーの熱湯割り。ビロード張りのソファに深く腰を沈め、遠のく意識の中にぼんやりと浮び上がるのは還暦をとっくに過ぎたママの笑顔。そして結論。この濃密な白粉臭さと漂う場末感は間違いない、美川憲一の世界である(テキトーだなあ)。

何か新しいことをやってやろうという気概などゼロ。しかし全員が鼻唄でも歌っているかのような力の抜けた小粒好盤なのだ。そして『クール・ストラッティン』『モーニン』などのファンキージャズや、後年のソウルジャズ路線諸作と比較しても、ブルーノート中で最も血中演歌濃度の高いアルバムであることは言うまでもない。

FLIGHT TO JORDAN(5:29)/STAR BRIGHT(7:45)/SQUAWKIN'(4:55)/DEACON JOE(8:38)/SPLIT QUICK(5:07)/SI-JOYA(6:42)
DIZZY REECE(tp)/STANLEY TURRENTINE(ts)/DUKE JORDAN(p)/REGGIE WORKMAN(b)/ART TAYLOR(ds)


【関連する記事】
posted by やきとり at 21:30| Comment(3) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
昨日、深夜に「文化系トークラジオ Life」(TBSラジオ)を聴いていたら「ディスクユニオン新宿スーパーセール」(9月4日(土)〜5日(日))の宣伝をしていました。

>ディスクユニオン史上最大級中古セール!
>各店強力廃盤セールを同会場に持ち込み同時開催。

だそうです。

○ディスクユニオンからのお知らせ (文化系トークラジオ Life)
http://www.tbsradio.jp/life/2010/08/post_159.html
 
Posted by MasaruS at 2010年08月30日 23:50
スタンリー・タレンタインって何か記憶あるなぁと思って調べたらチェリーてなアルバム持ってたことを思い出した。ミルト・ジャクソン目当てで買った記憶が朧げに浮かんだんだけど、どんな曲入ってたか全然覚えてないところがお茶目であります。
Posted by 朝日の様にいかがわしいひまぼけ at 2010年08月31日 11:45
>MasaruSさん
「Life」は聞いたことがないんですが、ユニオンがスポンサーに付いているんですね。なかなか的確な(笑)。ユニオンが何かのスポンサーに付いたのって初めてじゃないかなあ。猛暑続きで中古屋回りもままならない現在ですが(そのクセ野球には行ってるけど)、今日は少し早めに出て久しぶりに津田沼のユニオンにでも寄ってみようかしらん。

>ひまださん
「チェリー」良いですね。リー・モーガンの曲がアタマに入っているやつ。同じCTIの「シュガー」の方がジャケのインパクトで有名ですが、内容は「チェリー」の勝ちでしょうね。まあストレートなジャズなのでCTIらしくはないですが。てなわけで、そろそろマリン詣でに出掛けます。途中下車してユニオンに行かなくちゃ。
Posted by やきとり at 2010年08月31日 12:37
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。