2010年09月13日

アンクルトム

addio1.jpg
ADDIO ZIO TOM/RIZ ORTOLANI(GDM)/1971

サントラ強化月間を宣言したわりに思うように進まないなあ・・・というわけで4枚目は、1971年に公開された映画『ヤコペッティの残酷大陸』のサウンドトラックを聴いてみたい。

addio3.JPG
どうせエログロで塗り固められたヤラセB級ドキュメントの類だろうと思っていたが、原題を直訳すると「さよならアンクル・トム」だそうだ。つまりこの映画はアメリカの奴隷制度にスポットを当てた社会派ドキュメンタリー作品なのである。もちろんヤコペッティだけにエログロ要素は欠かせないが、エログロそのものを見せるのが目的ではなく、(珍しく)志を持って撮った映画なのだろう。ウィキペディアによればヤコペッティ初の完全劇映画とのことだが、残念ながらというか案の定というか大コケしたらしい。やっぱり社会派はカネにならないのね。

音楽はリズ・オルトラーニ。目を背けたくなるような陰惨な映像テンコ盛りの内容にもかかわらず、例によって思わず息をのむような美しいオーケストラ・スコアが全編にわたって展開される。同コンビで制作された62年の『世界残酷物語』に勝るとも劣らない美メロが連発なのだ。もっとも「モア」のようなシングルカット級の際立った曲は入っていないが、マジックが掛けられた変幻自在なオーケストラ・アレンジは、さすがオルトラーニである。祈りの声のようなボーカルがストリングスを翼を得て羽ばたく1曲目から、いきなり引き込まれる。

addio2.JPG
そして同じメロディは2曲目の躍動感のあるスコアに受け継がれ、忙しくアレンジを変えながら静かに水平飛行を続ける。ユーモラスな別テーマの静かな変奏をいくつか間に挟み、6曲目にフルートとオーボエによる感動的なメインテーマが再び現れ、大きく視野が広がっていく。見てもいない映画なのに、まるで映像が目に浮ぶようだ。さらに勇壮なマーチ調の7曲目を経て、ファンファーレと共に雄大なイントロが始まり、8曲目のフル・オーケストラによるテーマ演奏へと引き継がれる。優雅なワルツ12曲目もメインテーマの変奏だが、まるで別の曲のように聴こえる。

そして後半に入ると状況は一変する。激しいギターリフが炸裂するロックな13曲目でキリ揉み状態に巻き込まれ、さらに業火と化したギターがメインテーマをも焼き尽くしていく14曲目。前半まで栄華を極めていた優雅なストリングスはすっかり影を潜め、ビートを強調したアレンジが多くなってくる。黒人たちの反撃だろうか。疾走するリズム、せっつくようなギターのカッティング、咆哮するトロンボーン。しかし主な柱になるメロディは2曲。アレンジやテンポを変えているので最後まで飽きずに聴き通せるし、文字通り1本の映画を観終ったかのような、充実した聴後感が得られる・・・が、実際の映画はやはりエグいようだ。


(エグい映像を含んでいるので要注意!)


【関連する記事】
posted by やきとり at 23:30| Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
よくこんなに「全裸OK!」のエキストラ集められたなあ<そこ感心ポイントと違う?
Posted by DoX at 2010年09月14日 22:25
いやいや、そこも十分「感心ポイント」ですよ。何しろこの映画に出演しているのは全員素人で、プロの俳優が1人もいないそうですから(白派も黒派も)。ただし前々回のフトモモ映画は観てみたいけど、こっちはあんまり観たくないなあ。
Posted by やきとり at 2010年09月15日 13:15
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。