2010年10月24日

グルーヴ地獄

straightahead.jpg
STRAIGHT AHEAD/植松孝夫(TRIO)/1977

植松孝夫のリーダー作がCD化された。渡辺香津美の初リーダー作(当時17歳!)にも参加していたので、その威圧感のあるテナーは体験済みだが本作を聴くのは初めてだ。

スタートボタンを押した途端に襲いかかるグルーヴ地獄に、いきなり頭をガツンと殴られた。肉食獣のようなドラムスとパーカッションが牙を剥き出しにして疾走を始める。阿鼻叫喚、弱肉強食、血湧肉踊。クールでありながら野卑なグルーヴ感がたまりません。そして分厚いビートにねっとりと絡み付く強化ゴムのようなベースも素晴らしい。こんな音を聴かされたら、誰だって自動的に腰が動いてしまうというもの。スコールのようなエレピが駆け抜けると、テナーとトランペットの2管アンサンブルが稲妻のごとく閃光する。切り込み隊長はトランペットの岡野等だ。ギラギラと照り付けるようなソロでリズムを挑発すると、今度は植松がその暴れ馬のようなリズムを易々と乗りこなしつつ、野太いテナーでムチを入れる。もう大変。1曲目「ホワイト・ファイア」は激烈ジャングル・モード・ハードバップだ。

鎌首をもたげて威嚇するような怪しげなベースのリフに、エレピのコードが冷水を浴びせる「ミステリアス・ジャンプ」。むしろこちらの方が「青い炎」を思わせるクールに燃え上がるジャズロックである。大地にへばりつくように睨みを効かせる植松のテナーソロの途中で、突然極彩色のシンセサイザーが飛び出して空高く舞い踊る場面の美しさに思わず息をのむ。

ピアノの益田幹夫作曲「ファンシー・フリー」はピアノとテナーの高速インタープレイだ。まさに肉食獣の決闘。ピアノが先に仕掛けると寸前でテナーが切り返し、闇夜をつんざくテナーの咆哮にもひるまないピアノが畳み掛けるような速いフレーズで逆にテナーを断崖まで追い詰める。私はと言えば、何も引かない何も足さないインプロヴィゼーションを手に汗握って観戦するしかない。

次にコルトレーンのカバー「アフロ・ブルー」が出る。ざっくりとした心地良いアフロリズムに乗って、朗々とテーマを歌い上げる植松のテナーは、むしろソニー・ロリンズかデクスター・ゴードンを想起させる力強さ。益田の弾くフェンダーローズが、思いの外ポップでメロウである。

スタンダード「インヴィテーション」と言えば、ジョー・ヘンダーソンのコレに尽きるだろう。ピアノのモノローグから入るイントロはジョーヘン盤を踏襲しているが、フォービートではなくボサジャズのリズムで料理される。静かな横揺れ感覚が気持ちいい。そしてこの曲で聴かれる植松のテナーはどこまでも黒く太く、少しかすれてドスの利いた音色まで、まるでジョーヘンのようである。アグレッシブだが押し付けがましくない倉田在秀のドラムス、常に先回りして散弾銃の連射でフロントを迎え撃つ横山達治のパーカッションはここでも鋭い。

ラストの「サンバ・トゥ・キキ」は再び植松のオリジナルで、まるで刑事ドラマの主題曲のようなカッコいいテーマを持つジャズロック。テナーがソロで吹くAメロから、トランペットが加わって怒涛のメロディを畳み掛けるBパートへ突入する瞬間がたまらない。パーカッションとドラムスがここでも火の出るようなグルーヴ地獄を展開する。しかし実はこのアルバムの主人公はベースの濱瀬元彦なのだ。アコースティックとエレクトリックを使い分け、激しく動き回りながらもツボを抑えたねちっこいフレージングでフロントをグイグイ責め立てる執念と意地。油断するとベースばかり聴いている自分に気付く。けだし名盤。

WHITE FIRE(7:49)/MYSTERIOUS JUMP(8:31)/FANCY FREE(2:33)/AFRO BLUE(5:16)/INVITATION(5:00)/SAMBA TO KIKI(9:07)
植松孝夫(ts)岡野等(tp)益田幹夫(p,elp)濱瀬元彦(b,eb)倉田在秀(ds)横山達治(per)

WHITE FIRE


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posted by やきとり at 12:00| Comment(0) | TrackBack(1) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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