2010年10月26日

おでんで飲む

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久しぶりにセブンイレブンのおでんを買った。帰りの電車の中で予習してきた通り、大根、がんも、卵、コンニャク、つみれの5品を迷うことなくチョイス。ただいまセール期間中につき、これだけ買って350円というのがうれしい。家に飛んで帰って、まずはおでんを汁ごとあけた鍋を弱火に掛けてから、ひとまずシャワーを浴びる。すると風呂場から出た途端、台所にこもったカツオ出汁の良い匂いが鼻をくすぐるという寸法だ。

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裸のまま鼻をクンクンさせながら、とりあえず冷蔵庫から取り出した「麦とホップ」をグビビビと飲む。大急ぎでシャツを着て、いそいそと小皿に大根を取り分けて食卓まで運ぶ。いきなりメインディッシュに手を付けるのはいかがなものか、と批判される向きもあるかと思うが、大根の繊細な味は最初に賞味するのがベストと私は考える。箸でサックリと半分に割って、その一方をさらに半分に割る。翡翠色の扇形の円柱にカラシをたっぷりとまぶし、奥歯で噛んだ途端にほとばしる旨い液体で口内が満たされる。出汁で長時間煮込んであるから、大根の果汁特有のカドが取れて、実にまろやかな味わいになっている。噛むごとにジュワッと溢れ出る熱い汁を十分堪能してからビールを流し込んで、ここで一旦リセット。

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つみれは日本酒で食いたい。箸を添えただけでホロリと崩れ、口に入れると出汁の味をグイと抑えて立ち上がってくるのはクセの強い青魚の風味だ。噛んでいると粘りが出て、舌にねっとりとからみつく感じもいい。そして賛否は分れるだろうが、コンニャクも外せない。プルプル、クニュクニュの官能的な食感に加えて、出汁をたっぷりと含んでいるから、こいつも噛む度にグシャグシャと旨い汁が溢れて出てくる。その伝で行けば、がんもはさしずめ「美味しいスポンジ」だ。元は豆腐で出来ているから、スポンジ自体に大豆の旨い味がある。舌で探し当てたニンジンやゴボウのカケラを、前歯でチマチマ噛む瞬間がうれしい。見た目は地味だが、がんもの中には広大な味覚宇宙が広がっているのだ。本音を言えばもう1個食いたいところだが、少し足りないくらいのツマミで大量の酒を飲むのが、いわゆる酒飲みの美学でもある。

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いよいよ大トリの卵を台所から運んでくる。薄茶色に色づいてホカホカと湯気を立てる楕円体を横目でにらみながらコップに3分の1ほど残った酒を儀式のように飲み干す。そして、卵の胴体をうやうやしく箸で持ち上げる。こう見えて卵を食うのは難しいのだ。まずは尖った頭の方を3分の1ばかり食いちぎる。モロモロした白身の甘さとポクポクした黄身のコク、そしてカツオ出汁が口の中で渾然一体となり、得も言われぬ旨さにおでん晩酌は絶頂の刻を迎える。しかし油断してはいけない。残った卵を皿に置くときに、黄身が出汁の中に流出してしまわないように十分な注意が必要なのだ。もちろん出汁にコクが出るから、多少の流出・混入は構わない。しかしここはいかに卵を取り扱うによって、酒飲みとしての品格が問われる。黄身が汁に浸らないように、上手に箸を使って設計、掘削、切断、安置、展開しながら酒を飲み進めていく作業は、なかなか奥が深くて楽しい。

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そして残りひとくちになったところで、黄身を出汁に溶かし込んで、最後はコクのある出汁をサカナに飲む。この汁の旨さときたら、松茸の土瓶蒸しなど目じゃない(と思う)。鍋に残った出汁もすべて飲み干して、おでん晩酌終了である。ちょっと虚しい。


posted by やきとり at 00:00| Comment(12) | TrackBack(0) | 飲食方面 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
実に読み応えのある文章で、読む間に酒がすすむことすすむこと(大げさですが)。個人的には「と思う」のところにやきとり閣下の人柄がうかがえて、思わず僕も(そのはずだ)とつぶやいていました。いやいやごちそうさまでした。ちょっと虚しい。
Posted by かめきち at 2010年10月26日 03:25
コンビニおでんを、最後の食卓並みにうまそうに描けるのはやきちゃんしかいないねー。久々に堪能いたしました!

私は卵が一番先だなー。黄身がまじった汁で食べるのが好き。見た目は美しくないけれど。

私のベストは、大根、卵、すじ肉(関西の)、昆布、巾着もの(もちでもなんでもOK)、ですかねー。
作りすぎて何日か続き、飽きてきたらマヨネーズで食するのもおすすめw

大阪にいた頃は必ず別寅の「梅焼」を入れてたなあ。
びっくりするほど膨らむのも楽しくて。
Posted by みみず at 2010年10月26日 08:08
>大急ぎでシャツを着て、

パンツはかないの?
 とつまらぬ茶々は入れずに…。でも、これを女の子文体で書いたら、もっと受けるんじゃないかな。いや、ヒンシュクかな。
Posted by kuroneko at 2010年10月26日 10:28
ガキん頃漫画「おそ松くん」に出てきた「おでん」は未知で且つやたら美味しそうに見える食べ物でしたが、実は大阪で言う関東煮(かんとだき)であるって知った時は、ちょっとだけ落胆したのでした。と言ってもかんとだきが嫌いって訳じゃなく(と言うよりダイスキ)、知らない食べ物への憧れが消滅したって意味で。
卵は食べるの難しいですなぁ。人3倍不器用なアタシはすぐにバラバラ殺卵事件にしてしまいまする。で、一番好きなんはジャガ芋ですかね。味がしみてホクホクなんが最高。でもホントの一番は鍋の底で具材が破片になって沈んでいる汁をご飯にぶっかけて食うのが最高に好きなのでした。
Posted by 最近かんとだきと言わなくなったなぁと思うひ at 2010年10月26日 10:42
ごちそうさま。
コンビニおでんが、どこかの名店の品に見えて垂涎ものですなあ。私はネリモノが好きで酒を飲みながらいくらでも食べてしまいます。ごぼ天(ごぼう天)なんか堪りません。ひまださんも仰っていますが関西では「関東煮」と昔は言ってましたねえ。カントダキと発音しますが。今はおでんと統一されているみたいです。ところで名古屋でおでんを注文すると「ミソですかカラシですか」と聞かれました。
Posted by something at 2010年10月26日 11:17
>かめきちさん
ちまちまとしたルールをあれこれ設定して、それを順守しながら無心に飲むのが独り酒の醍醐味でございます(大人のママゴトみたいなもんですね)。しかしながら「こいつをネタにブログを書いてやろう」と写真を撮りながら飲むのは邪心が混入しているようでイカンなあとも思うのです・・・が、そのママゴトを右斜め上から観察していた別の私(俺2号)が「みなさーん! 俺ですけど、俺がこんなことやってますよー」と報告するのもまた楽し。うーん意味不明。

>みみずさん
卵の黄身混じり汁はボルシチを蹴落として世界3大スープのひとつに認定されました!(ボルシチってよく分んないから) すじと言えば関東では魚スジが主流でしたが、最近はこっちのセブンイレブンにも置いてあります。それから以前やつらださんと非国民さんと3人で立石(京成)のおでん屋で飲んだ時、2人はトマトを食ってましたが私は恐ろしくて手が出ませんでした。梅焼を検索してみたら、カステラっぽい物体?

>kuronekoさん
わたし17歳の焼鳥子。黒百合女子大付属高校テニス部に所属するピッチピチの2年生なんです。今日も部活の後にシャワーを浴びて部室に戻ると、大根が置いてあったんです。やだー、うっそー、こんな太いの入んないー。大根の先は濡れそぼってツヤツヤと光っていたんです。わたし思わず、ジュンと濡れちゃいました(ヨダレで)。でも周りに誰もいないのを確かめてから、小さなお口をいっぱいに広げて、その太いモノをくわえてみたんです。そうしたら熱い液体がお口の中に迸ったんです。うっそー、信じられないー。

>ひまださん
ギャートルズの肉、ハイジのチーズ、ハクション大魔王のハンバーグ同様、ちび太のおでんもマンガ物件ですね。私もおでんは好きなのですが、子供の頃に家でドンと出された「鍋おでん」はちょっとツライかったです。味がずーっと一緒だし、飽きちゃうんですよねー。ネリモノ率が高かったからかもしれません。好みのネタがジャガイモとは渋いですなあ。あれも煮崩れた外壁が溶け出して、汁にコクが出るんですよね。よし次はジャガイモを注文しよう! 汁も飲まずに飯をブチ込んで雑炊だ!

>somethingさん
私は逆にネリモノを食わなくなりましたねー。子供の頃はチクワとかイカ巻とか好んで食ってましたが、やはり味が単調で腹に溜まるから最近はどうしても敬遠気味になってしまいます。あ、でも一時期バクダンに凝ったことがあります(そもそもネリモノなのかどうかは不明ですが)。それとゴボウ天は今でも食いたいのですが、何と! 近所のセブンイレブンには置いてないのですよ! バクダンもゴボウ天もおでん屋に行かないと食えないのかあ。
Posted by やきとり at 2010年10月26日 19:46
友達がコンビニでバイトしてたとき煮込みすぎた廃棄のおでんの売れ残りのイカ串を貰って食いました。アレはやわらかくて味がよくしみててうまかったなあ。トマトって食ったことないです。どうなんだろ。やっぱおでんのメインは大根ですね!!

焼鳥子ちゃんはちょっと昭和風味の女子高生ですね。
Posted by DoX at 2010年10月26日 20:46
煮込み系料理は翌日の方が圧倒的に旨いですよね。トマトのおでんは静かなブームだそうですよ。でも酒のサカナについては反動保守の私ですから、あんまり食いたいとは思わないなあ。食ったら食ったで「うまい!」とか言いそうですけど(笑)。まあ何だかんだ言って、私も大根がチャンピオンだと思います。あと宇能鴻一郎先生のマネをしてみたんです。やだー。うっそー。信じられなーい。
Posted by やきとり at 2010年10月27日 11:44
ハンペンが抜けているではないか !北海道ハンペン普及協議会会員は激しく抗議する
なんて、東京に行くまでは煮込みオデンやらハンペンなんて味わい知らない田舎者でしたが。セブンのオデンに焼売がなくなって何年になるやら。
Posted by 介護員 at 2010年10月27日 18:02
嗚呼ついに来ましたか。ハンペン問題が。えー正直に告白しますと、ハンペンは出されれば食うけど、好んで食いたいとは思いません。何だかスカスカだし、本物のスポンジみたいだし・・・セブンイレブンの四角いおでん鍋で、唯一プカプカ水面に浮いているのも「中身カラッポ感」を演出しているようで、とても手が出せないのです。も、もも、もうしわけございません! 
Posted by やきとり at 2010年10月28日 11:23
小島功か。懐かしいですね。昭和30〜40年代、『週刊新潮』かなんかに連載していたと思う。

無人島ネタもあっやっけな。だいぶ忘れたなあ。
Posted by kuroneko at 2010年10月28日 23:38
「ヒゲとボイン」は、学生時代に購読していた「ビッグコミックオリジナル」に掲載されていました。ただこれが死ぬほどつまらなくて、「ああ、やっぱり面白くない」と毎回確認するために読んでいたようなものです。無人島ネタと言えば、秋竜山を思い出します。こっちは面白かったです(たぶん)。両人ともまだ現役なのがスゴイです。
Posted by やきとり at 2010年10月29日 09:25
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