2010年12月08日

巡礼

compostela.jpg
コンポステラ/篠田昌巳(puff up)/1990

篠田昌巳のプロジェクト、コンポステラの実質的ファースト。

篠田昌巳という音楽家を理解するのは不可能である。あまりにスケールが大き過ぎて、私のような凡人には全体像がつかめない。篠田の名前を初めて目にしたのは「生活向上委員会」だった。まるで老舗居酒屋の煮込みの大鍋の中のような、得体の知れない有象無象がゴッチャになってグツグツと怪しげな気泡を立ち上らせるカオスの中で、篠田は最初ホンの具のひとつに過ぎなかったと思う。

「じゃがたら」に1982年から解散までの7年間在籍していたそうだが、私はその頃の篠田をまったく知らない。同時に「長谷川宣伝社」というちんどん楽団にも加入し、実際に営業活動も行っていたそうだ。ではジャズの人では無いのかと言えば、これぞフリージャズの王道を進む生き方のようにも思える。

フリージャズや雑食系ロックバンドを渡り歩きながら数多のセッションをこなし、ユダヤ音楽、昭和歌謡、沖縄民謡、ちんどんとフシギな隘路に積極的に迷い込みながらの巡礼の果てに、ついに宇宙へと到達した篠田昌巳。一見まとまりの無い音たちが収められているようで、大鍋でドロドロに煮込んでしまえば、コッテリ濃厚で滋味溢れる味わいに仕上がる。笑いも怒りも涙も一緒くたにすすりこむと、いくらでも酎ハイが進むというもの。

オーバーチューン〜ニキシのまだ来ない朝/しあわせなユダヤ人/イディッシュ・ブルース/僕の心は君のもの/タンゴ・タンゴ/カティンカ/S-1/我方他方/同志はたおれぬ/耕す者への祈り/うす闇の子供/プリパ
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posted by やきとり at 13:00| Comment(34) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
レコード評、有難うございます。やきとり様の愛が伝わって来ますです。でも、ネットには音源が転がっていないようなのが残念でなりません。やはり、安易なのはいけないということなのでしょう。

 先日の嵐の後、駅に向かっていたら『高校3年生』などを演奏しつつチンドン屋さんがやってきて驚きました。チンドンもそれなりに面白いとは思いますが、どうしてこう一流音楽家の魂を鷲掴みにして開業までさせてしまうのでしょうか?まあ、仕事が足りないと言うこともあるのでしょうが。
 では、また
Posted by L at 2010年12月08日 21:39
このアルバムは何回聴いても分らないんです。もっとも分る音楽なんてすぐに飽きてしまうので、それだけでこの音楽は一生モノでございます。音楽が内包するあまりの情報量の膨大さに、私のような凡人は立ち尽くして仰ぎ見ることしか出来ず、ましてや感想文など書けるはずもなく思わず煮込みに逃げてしまいました(笑)。だからと言って難解ではなく、一緒に鼻歌でもうたいながら気楽に聴けるのが良いですね。

先月知人のちんどん社長が座長を務める軽演劇を、浅草まで見に行きました(ちなみに去年見に行ったやつと同じです)。http://ch10670.seesaa.net/article/131798772.html ちんどんはジャズ以上に部屋で聴くもんじゃなくて、ライブで空気を丸ごと楽しむ音楽なのは間違いないでしょうね。しかしそこに参加しちゃうのは、やっぱり篠田氏の器のデカさですかね?
Posted by やきとり at 2010年12月09日 11:43
 こういう意味・意図もあったのですね。知らなくて、つっこめなくてすみません。

 >@Realjazz_Crowd 篠田さん、今日はお誕生日ですから、残された私たちはイベントやりやすいというわけです〜。今年は静かに、思いを馳せて過ごします。(みわぞう)
10:39 PM Dec 8th www.movatwi.jpから Realjazz_Crowd宛
Posted by L at 2010年12月10日 15:17
バレたか・・・と言いたいところですが、実は8日は命日だと勘違いしていました。実際には誕生日だったんですね(ちなみに命日は9日でした)。いつもながらツメが甘い私でございます。
Posted by やきとり at 2010年12月12日 11:40
 今月は、何人もジャズメンが亡くなっているんですね。彼等についても、お話頂けたら嬉しいです。
>03年の暮れは丁度シカラムータのツアー中だった。まず広島での本番直前、大原の訃報を知った。彼の名曲「旅行」も予定に入れていたが、つらい本番だった。その翌々日、名古屋への移動中、今度は野本の訃報だった。名古屋の本番ではメンバーが次々に体調を崩し、僕も終演後高熱にうなされた。(大熊)
10:30 AM Dec 10th webから

野本君の葬儀で、骨壷の一番上に頭蓋の天辺がのっかっていた。彼はちょっとコーンヘッドみたいなとんがり頭だったけれど、骨もそのまんま、とんがっていたのでびっくりした。僕は彼が煙になるのを見届けたかったのだが、最近は無煙式になっていて何も見えずひどくがっかりした。(大熊)
10:13 AM Dec 10th webから

2003年、野本君を誘って何度かライブをやった。これはそのひとつ→http://p.tl/siXk その後もう一度くらいやったのが最後だったか。楽しそうに吹いてくれたな〜。普通に元気そうなので、つい喉にステント(管)を通しているのを忘れるほどだった。(大熊)
10:12 AM Dec 10th webから

野本さんとゆかりのある皆さんのツイートを読みながら、野本さん祭りかなにかできたらいいなあ、なんて、さびしい気持ちを吹き飛ばして、楽しい気分にさせられています。大学の後輩としても、先輩のお役に立ちたいものです。(みわぞう)
9:26 AM Dec 10th webから

私たちも12月になるといつにもまして野本さんのことを思い、何かしたいと話しています。(みわぞう) RT@MAKIBRI 野本和浩特集。もっとすべきだな。彼のCDR もちゃんと盤にしてあげたい。
9:15 AM Dec 10th webから
Posted by L at 2010年12月12日 21:10
確か大原さんはずいぶん前に観た「渋さ」の中にいたはずなんですが、あまり印象に残っていないんですよ。だって変な人ばかりでしたからね(笑)。

それから野本和浩は名前くらいしか知らなかったのですが、奇しくもいつも聴いてる大友良英のポッドキャストで追悼特集を組んでいます。

http://www.kbs-kyoto.co.jp/audio/jamjam/jamjam_20101210_hu1fds9u.mp3

肝心の音楽がカットされているのが残念ですが、明治のジャズ研の先輩後輩だった頃のエピソードは興味深いです。
Posted by やきとり at 2010年12月12日 23:06
 ありがとうございます。

 >大友良英のポッドキャスト
 小生も聞きました。知らなくても泣けて来る良い番組ですね。野本さんのHPが遺されていて、それを見ていると、愛すべき非常に良い男なんだなと言うのがひしひしと伝わってきました。まあ、晩年はアルコホリックで、何かと面倒臭い人だったそうですが。

> MAKIBRI 野本はほんとうにいい曲たくさん書いたよ。「ゾウアザラシ」「天国をのぞきたい」。12月23日にリイシューされる「人間の顏」に入ってます。
4:00 PM Dec 10th Tweetie for Macから
cicalamvtaと4人がリツイート

cafeavant 今夜のJAMJAMラジオは野本和浩さんの特集。 2003年12月15日に亡くなったので、ちょうど7年前だ
3:17 PM Dec 10th YoruFukurouから
cicalamvtaと5人がリツイート


k1oku 死んでからあいつはいいやつだったとか才能があったとか言うくらいだったら生きている時に言ってくれ!   のもとかずひろ の代弁 (涙)
2010/12/11 2:32:58 webから
cicalamvtaと10人がリツイート

 大原さんというのも酒に飲まれて焼け死んだトロンボーン奏者でしょう?
 あと、何年かすると、日本版ラウンドミッドナイトが作られるのでしょうか。
Posted by L at 2010年12月13日 18:55
『ラウンド・ミッドナイト』はずいぶん前にビデオで観ました。デクスター・ゴードンの演技が素晴らしかったですね。そう言えばパーカーの伝記映画『バード』も良かったなあ。あとモンクのドキュメント映画『ストレート・ノー・チェイサー』も! 後の2本はクリント・イーストウッドの「ジャズ愛」全開でステキでした。
Posted by やきとり at 2010年12月13日 23:08
土曜に、plan B定期上映会
映画「山谷─やられたらやりかえせ」上映会&講演東琢磨(音楽批評)http://homepage3.nifty.com/joeii/PlanB.html
というのに行ってきました。
 早めに着いたので1番でした。1200円払って、”コンビニでチューハイでも買っておけば良かった”とか思いながら中で待っていたら、たえなる調べが聞こえてきました。思わず、もぎりの方に「こ、これはもしかして(この映画のBGMで、篠田昌己、大熊亘らによる)「蠱的態」http://www.cicala-mvta.com/kotekitai.shtmlではありませんか?」と尋ねると、ごくあっさりと『そうですよ。そこでテープを売ってますよ。』「ください。文字でしか知りませんでした。嬉しいです」『1000円です』。篠田昌己さんはhttp://www.youtube.com/watch?v=mB2GYm4BL4Aくらいしか知りませんが、吹きっぷりは良く似ていますね。
 恐ろしいことに上映の頃には、若いもんが65人も来て満員になりました。
 映画も面白かったし、東さんのお話も面白かったのですが、そのあと『交流会をやるのでよろしかったら』というので、付いて行ったら後ろに大熊さんがいて驚きました。小屋主や講師の方と親しいようでした。「明日の準備があるから」ということですぐ帰ってしまいましたが。お酒をたっぷり飲まして頂き、話も盛り上がり大変楽しかったです。『あの方は、どうやって食べているのでしょう?』と伺ったら、『新聞の校正をしているんですよ』と教えていただきました。
 前売り・予約なら1000円で、映画・講演・飲み放題・サブカル・政治・オヤジ話し放題なので、とても良かったですよ。つぎは3月らしいのですが如何ですか。
 
Posted by L at 2011年01月24日 20:27
ソウルフラワーユニオン〜大熊さんつながりで、アマゾンに注文しました。
再発盤も在庫少ないみたいで、ギリギリ間に合ったみたいです。
届いたばかりで一回聞いただけですが、わたくしにとっても長く聞き続けていける音楽です。
紹介ありがとうございました。
Posted by なめぴょん at 2011年01月24日 22:37
>Lさん
相変わらず色々と面白そうな場所に出没してますなあ。CD-Rじゃなくて、まだカセットで売ってるのがスゴイですね。私はもちろん未聴ですが、内容はフリーインプロなんですか? 都合が付けば私もぜひお邪魔したいですねえ。ところで、A-MUSIKの「エクイロジュ」は、音源がフリーで公開されてます。とっくにご存知でしたら失礼しました。

http://am.jungle-jp.com/e_ku_iroju/index01.html

>なめぴょんさん
インストなので取っつきにくい部分もあるかと思われますが、ジャズに縛られていない音楽なのでロケンローラー(笑)でも入りやすいのかもしれません。お気に召して頂いたようで何よりでございます。
Posted by やきとり at 2011年01月25日 09:34
 やきとりさま、日常が悲しく惨めで寂しいので、集会にかったるいのに通ってしまうのです。上野駅にクニの言葉を聞きに行くようなものですよ。
「蠱的態」ですが、講師の方に入手の感激を話したら、『昔ディスクユニオンで働いていて、随分売ったものですよ』と仰っていました。カセットという形式は、蘇る80年代ですよねえ。モギリの方も「カセットだけど大丈夫?」と心配してくださいました。大丈夫だと思って家に帰ったら、デッキもウオークマンもみんな逆らいやがり、しょぼいテレコで再生したらAM並みの音で、ちょっと泣きました。これが生なましくていいんだと言い聞かしています(録音が悪いわけではありませんよ)。内容は結構しっかりした曲と演奏で、基本的にはそんなにフリーインプロという感じではないと思いますです。インプロヴィゼーションフリーキーという曲は即興だそうですが。平井玄先生のライナーには、『これが、この国の1980年代の音楽なんだよ』(21世紀に娘に語りたい)とありまして、映画ともども40代には非常に染み入るのであります。
 A-MUSIKの「エクイロジュ」音源がフリーで公開されているとは、存じ上げませんでした。これはすばらしいですね!じっくり聞き込みます。
 さて、日曜日には
 1/23(日)混民サウンド・ラボ・フォーラム第10回 『クレズマー・アゲインスト・シオニズム』
〜クレズマー音楽を再評価する〜 (※トークイベント)

バネリスト: 平井玄、大熊ワタル、北里義之(司会)

■吉祥寺サウンド・カフェ・ズミで、平井玄、大熊ワタルのご両人をゲスト・パネリストに迎えたフォーラム
「クレズマー・アゲインスト・シオニズム──クレズマー音楽を再評価する」を開催いたします。
若い世代のミュージシャンたちによるクレズマー音楽再評価の機運が沸き起こった1980年代に、
いまは亡きチェロ奏者トム・コラを介して日本にクレズマー音楽を紹介した大熊ワタルさん、
ジャズ体験の後に深くクレズマーに魅了され、ジョン・ゾーンのマサダを軸として数々の論考を発表された平井玄さん、
おふたりが21世紀にはいったいまの時点で、クレズマー音楽の再評価と新たな聴き方を提案いたします。
カフェ・ズミのすばらしい音響設備で実際の音を楽しみながら、
簡単に正体を明かしてくれないクレズマー音楽の背景を丹念に読み解く
フォーラム「クレズマー・アゲインスト・シオニズム」に、ぜひご来場ください。
(主催側告知文)

会場: 吉祥寺「サウンド・カフェ・ズミ」
というのに行ってきました。
 大熊さんは、日本でクレズマーに注目した最初の頃の方(梅津さんらと、来日したミュージシャンによる紹介と3つの流れ)だそうです。それは、篠田さんと組んで、音楽性を模索していたとき(「俺は篠田のリサーチ係だった」)に、さる音楽マニアからされたことから始まったそうで、『これだよ、大熊!』で、2人はクレズマーを始めるようになったそうです。
 お話のほうは、異常ににマニアックで私以外はマニアなインテリ、お仲間ばかりで、平井さんは今時クレズマーの特集をしているのは全世界でここだけだといっていました。相当つらいものでしたが、世界が広がったから良いかなと。まあ、どこに「アゲインスト・シオニズム」があったんだよというのは、ナニでしたが。土曜の講師の方、話しがあって盛り上がり、こちらにも来ると仰り、誘われたので来たのですが、二日酔いの酔っ払いで、顔を出したけどすぐ帰ってしまい、残念でした。
 大熊さんは
>クレズマーDJトークで初見参の吉祥寺カフェ・ズミ。面白い場所&マスターで、お宝音源の山。で、今日かけた音源、振り返るとバスクラ率高し。時代は今バスクラか!? バンドではCHARMING HOSTESS→http://p.tl/wuDJを知ったのが今回の収穫! あ〜面白かった。
と呟いています。
 みわぞうさんは
>クレズマーをテーマにした今日のイベント、大熊さんのミュージシャンとしての視点と、音楽評論家・平井玄さんのオリジナリティある鋭い視点が良いバランスを成して、とてもおもしろかった。まだまだいろんな話が聞けそうなこのテーマでまたぜひやってほしい。主催の北里さん、ありがとうございました!
9:19 AM Jan 23rd webから

@sakuraiyoshiki そうです、泉さんです!ベランダ越しでおしゃべりできるお話も伺いましたー。カフェズミにはお宝がたくさんあって大熊さんも感激していましたが、特に泉さんご本人こそお宝ですね。さりげなく出して下さったワインもとてもおいしく、おつまみがこれまた格別でした。
9:08 AM Jan 23rd webから sakuraiyoshiki宛
カフェズミさんで打ち上げ。激ウマのチーズ盛り合わせを堪能!かつてセゾンの広告代理店で大活躍されたマスター、泉秀樹さんのお話がおもしろくてたまりません!
5:02 AM Jan 23rd Keitai Mailから

平井玄さんによると、ディスクユニオンの売り場に、いまや「KLEZMER/クレズマー」の棚はないとのこと。悲しい。
12:05 AM Jan 23rd Keitai Mailから
だそうで。
Posted by L at 2011年01月25日 20:02
 なめぴょん様、過分なお言葉、もったいのうございます。
 アマゾンでも買えるのですね。HPの記事、PLAN-Bでの売られ方、大熊さんの出現、映画が映画だけに、大熊さんが埋もれてしまうのは悔しいと内職でダビングして卸し、手売りに来たものだと美しく妄想しておりました。映画の後の交流会のとき、テーブルの上にテープと代金の入った小箱が載っていて、回収せずに大熊さんは帰ってしまったので、不思議に思いました。まあ、2ヶ月おき位で掛けるようなので、売り切れたら回収するのかなと受け止めたのですが。
 「蠱的態」、相当面白いですよね。私も当分飽きず、聞き込むと思います。80年代の音楽シーンは、ROでは『失われた10年』とか枕詞に使ったりしていたかと思いますが、同世代の人間にとっては相当面白かったと思います。なめぴょん様のブログを読むと胸が熱くなります。まあ、小生は”ガソリンが切れてしまった”ので、新しいものはもういいよなんですが。スプリングスティーンのように、どうしようもない中にあってさえも熱い心を喪わないなめぴょん様は本当にカッコイイと思っています。やはり、80年代でさえ、谷底で痙攣するトラを心の底から応援し続けた方は違いますねえ。
Posted by L at 2011年01月25日 20:30
なるほど。私はマリンに通うようになってから、ライブから足が遠のいてしまいました。「昼ロッテ、夜ジャズ」というのも考えるのですが、体力と経済力不足でいけません(笑)。ところで篠田・大熊氏の、クレズマーとの出会いエピソードは興味深いですね。まあ私は「これはクレズマー・ミュージック」と認識して、音楽を聴いてるわけではないですが、梅津氏やマサダの音楽には混ざってるんですよね。

日曜日は仕事なのですが、「クレズマー・アゲインスト・シオニズム」というテーマは面白そうだなあ。彼らがシオニズムについてどう考えてるのかは、以前から気になっていました。もちろん反対なのだろうけど自己矛盾というか、そこいらへんをどう折り合いを付けているのか。もっとも音楽は音楽なので、大きなお世話ですが(笑)。

A-MUSIKの「アイ・ダンス」という曲で坂本龍一がピアノを弾いているのがミソです。
Posted by やきとり at 2011年01月26日 11:33
「クレズマー・アゲインスト・シオニズム」というテーマについては、平井玄さんが近く「シオニズムの解剖」という本で論ずるそうです。シオニズムとの折り合いについては、それこそ人それぞれで多様のようです。推していたのは、KLEZMER 1993 NYC(Knitting Factory)でした。東欧から来たドイツ語のユダヤ方言であるイディッシュ語をしゃべり歌う貧しいユダヤ移民の”アメリカにおける”歴史を踏まえた曲のコンピ盤らしいです。
 正しく読解できたか不安ですが、ジョン・ゾーンらによる「マサダ」というのは、ジャケが「死海文書」で、非常に優れた演奏家による優れた作品群(なので、イスラエル良いかなと思わされてしまう)と、言っていた様な。
 マサダというのは曽野綾子が”集団自決”を語るときに引き合いに出していた事件です。これは、ユダヤ教徒のごく一部による狂信的な原理主義者が非妥協的なために引き起こした「ガイアナの人民寺院事件」みたいなもの。一方、多くのユダヤ教徒は、いわば地下にもぐり、ヤヴネの町にお寺を作って、再興し、今日に繋がって行ったんだそうです。で、平井先生は、「マサダか、ヤヴネか?」という問いから始めたので、ジョン・ゾーン褒めてないと思うのですが。
 では、A-MUSIKの「アイ・ダンス」という曲で坂本龍一がピアノを弾いているの、早速楽しみたいと思います。
Posted by L at 2011年01月26日 19:05
うーむ、無学の私メには難しい話ですなあ。ただ、「マサダ」というのは「非穏健派」なんですね。ゾーンはパンク者だから、あえて裏の意味で使っているのかも、と妄想してみたり。私に言えるのは、「マサダ」のデイヴ・ダグラスはカッコ良いトランペッターということくらい。いやはやロクなコメントを返せず、もうしわけございません。
Posted by やきとり at 2011年01月27日 07:11
私もちっともわかってません。マサダも聴かせて貰いましたが異常にカッコよかったです。平井さんは、でも、そこが危険と言っていたような。現代イスラエルでは、一部のハネッカエリの自滅であるこの事件が民族の記憶・典型視されていて、「そんな非国民なことではマサダになるぞ」と言う脅しになっているようです。こんにち生き伸びているユダヤ人は、マサダではなくヤヴネを選んだ人々の子孫なのに。で、死海文書にはこのマサダの物語も記されているそうな。
 大熊さんのレジュメには、「90年代 次世代の表現 ゾーンの革新性と特異性」とか
 「二つの方向性・葛藤
・革新派
 奴隷的な再生産はもういい(J・ゾーン)
・保守派
 安易なクレズマー熱は表層的 商業主義に利用されている ユダヤ性は重要
などとあるのですけど、あんまり平井さんとの話を敷衍することはなかったので、一層よくわからないです。
 ただ、現代のクレズマーと言うのは、基本的には、(ヘブライ語の)イスラエルの音楽ではなく、(イディッシュ語、英語の)アメリカの音楽のようで、無茶苦茶イスラエルに親和的ということはないようです。まあ、どれほど自覚的で、反シオニズムかはわからないけど、と言う感じでしょうか。
Posted by L at 2011年01月27日 19:00
そーですね、アメリカ人が全員ティーパーティーというわけじゃないし(笑)、ましてやイスラエルの音楽だからというだけで構えちゃうのは、態度としては大問題ですね。こりゃあ反省反省。でも、どうやら演ってる当人たちも、ハッキリ分っていないのかなあ。基本的に思想と音楽は分けて考える必要があると思うのですが、この問題に関してはそう単純に割り切れないし・・・。ただ、クレズマーや「マサダ」が、カッコいい音楽であることは間違いないですね。
Posted by やきとり at 2011年01月27日 19:14
イギリスとかでいうと、レゲエやスカを信奉してるはずのやつらがゴリゴリの民族主義、白人至上主義だという例もあります。
どう考えてもおかしいんだけどねえ。
ジョー・ストラマーが草葉の陰で泣いてるぞ。
R&Bに一生消えない刻印を押されてるスプリングスティーンも、「俺のオーディエンスのほとんどが白人なのは俺の失敗であり、痛恨事だ」と言ってます。

日本でも「愛国パンク」ってあるしなあ。

でも、おれは大槻ケンヂいうところの、心臓の鼓動に連なったビートは、生の肯定であり、戦争する気もなくなるほど危険な音楽なのだ。というところに賭けます。
Posted by なめぴょん at 2011年01月27日 21:53
レゲエと言えばマリちゃんが付き物なのに不思議ですね。あと愛国パンクだけでなく、楽器が買えない貧困層の黒人が怒りを叩き付けるために始めたラップも、日本に入ってくるとキングギドラみたいなのが出てきちゃう。音楽と思想は切り離して考えるべき、なーんて言いながら、やっぱり気になるんですよね。スプリングスティーンとオーケンの至言を信じたい。
Posted by やきとり at 2011年01月28日 08:54
80年代のイギリスにもオイパンクというスキンヘッドの奴がやる右翼パンクみたいなのがありました。今もあるのかもしれません。
若者のフラストレーションが反社会的パンクとして噴出しているなら、右翼に向っても左翼に向っても、アナーキズムに向ってもアンチクライストになっても大差ないような気もしますね。
結局パンクの根っこの一つであるレゲエやスカに行くのかな。
Posted by pulin at 2011年01月28日 17:29
若者にとって「ベクトルの向き」なんかどっちでも良くて、「ベクトルの長さ」とか「ベクトルのトンガリ度」とか「ベクトルのギラギラ度」が重要なんですね。今の若者は色々と虐げられているからなあ。
Posted by やきとり at 2011年01月28日 23:32
http://www.amazon.co.jp/Klezmer-Plus-Sid-Beckerman/dp/B000000MNH/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=music&qid=1296277771&sr=1-1

上の方のコメントにあるクレズマーって、この盤などはドロドロのユダヤ民俗音楽というよりいくぶんかジャズに近かったり、いろいろあるものだと分かりました。
Posted by pulin at 2011年01月29日 14:17
「プラス」の部分がジャズなんですかね。ジャケはどう見てもジャズですが、曲名が読めない・・・。何とか試聴できないものかと思いましたが、youtubeで検索しても出てこないですね。
Posted by やきとり at 2011年01月30日 11:50
大熊さんのお話では
 クレズマーとは、

 アシュケナージと呼ばれる東欧系のイディッシュ語で話すユダヤ人にルーツを持つ音楽で、彼らの流浪の歴史を物語るもの。すなわち、ロマ・ルーマニア・バルカン・モルドバ・ロシア・ポーランド・ドイツなどの音楽の影響を受けたもので、それにユダヤ風の味付けがなされた音楽。
 で、現代のクレズマーは、こうした東欧・ソ連のユダヤ人が、19世紀末から20世紀にかけてアメリカに大量移民してきて、ジャズや商業音楽に出会い化学変化して出来たものだそうです。20世紀はじめには、イディッシュルネッサンスが起こりだいぶ盛り上がった由。
 クレズマーの外で活躍した人も多く、ベニーグッドマンはクレズマー調は隠し味程度に使い、ガーシュインはクレズマーを「脱皮」し、スタイリッシュな新しいアメリカ音楽を提示したのだそうです。
 で、衰退とリヴァイバルを繰りかえしながら今日に至るのだそうです。
 KLEZMER 1993 NYC(Knitting Factory)
は、クレズマーをこの時代に再生させようと言うグループが一堂に集結したものだそうで、ラップもあるそうです。
 

Posted by L at 2011年01月30日 15:38
そういえばデュークエリントンの「キャラバン」もクレズマー的に演奏すればかなりクレズマーぽい曲だと思います。
Posted by pulin at 2011年01月30日 16:06
>Lさん
フムフム、押しの強い高速2ビートはコサックダンスを踊りたくなったり、ポルカにも通じるし、究極のミクスチャー音楽とも言えるんですね。篠田=大熊ラインは、さらにチンドンを付け足したと(笑)。それと「渋さ」も強烈なバルカンビートを基調としているし、まあ自由な音楽という点では、ことさらシオニズムに拘る必要は無さそうですね、と我流で解釈してみました。楽しければOK!

>pulinさん
「キャラバン」は、エキゾとかジャングルってイメージじゃないですかねー。ただ通常フォービートで演奏されるBパートを、クレズマー風2拍子で演奏してもカッコいいかもしれません。
Posted by やきとり at 2011年01月30日 23:56
 だらだら引き摺ってすみません。

 この映画には、かの大友さんも関わっていたのですね。

>皆さんにもぜひご一読願えれば。 RT@FMN_S_F オロナミンCの空き瓶
http://fmn.main.jp/wp/?p=2831

 悲しいことに、「山谷〜やられたらやりかえせ」は、古典にも歴史にもなれない映画のようで。

 次回は、3月26日(土)、詳細は未定だそうです。
Posted by L at 2011年02月01日 21:18
 失礼しました。FMN SOUNDFACTORYというのは、大友さんのレコードを出しているところですね。

http://fmn.main.jp/wp/?p=2839#more-2839
>ニューヨークでも上映実行委が立ち上がり英語字幕版での上映もありました。その上映実行委の一人であったのは当時ニューヨーク在住だったチェリストの故トム・コラでした。

 日本にクレズマーを紹介した方じゃありませんか。なんか、凄く狭いところでやっているんですねえ。フリージャズの人って、凄いなあ。
Posted by L at 2011年02月01日 22:02
F.M.Nでは何度かCDを買ったことがあります。助けを求めに入った交番の警官が何もせず薄ら笑いを浮かべていた、という事実にはハラワタが煮えくり返る重いです。3月の回はぜひ観に行きたいと思っています。
Posted by やきとり at 2011年02月02日 11:30
”僕らの国”は、本当にろくでもないですね。
僕らが困り果て、助けてくれと泣きつくとき、やつらはへらへらと笑い、今では何もしないどころか、”自己責任だろ”と罵倒される始末。

 それでも映画が作られた80年代半ば、まだ派遣法もなかったし、国鉄が走り回り、総評も社会党もありました。映画の中で、「ケタオチ?、ふざけんな!」と言った台詞も出てきます。日米同盟、海外派兵、馬鹿言ってんじゃないよ!でした。あれから、四半世紀、こんなザマに、惨めな社会になるとは全く予想できませんでした。なんだか、もう涙でてくるな。

 3月、小生もぜひ行きたいと思います。前のほうにいる、リアクションの大きい、見るからに駄目そうな小汚い中年がきっと私です。横目でちらちら見てやってください。交流会で、お話できたらとても嬉しいです。
 
Posted by L at 2011年02月02日 19:47
>Lさん
たしか最初の監督だった佐藤さんを刺した組員は、
その後一目散に交番に逃げ込んだのではなかったでしょうか?
(『やられたら・・・』未見なもので、映画の中で描かれていたら御免なさい。)

リンク先のブログで述べられているように、警察は手配師を束ねる
地元ヤクザとは仲よしの関係であり、
権利を主張する労働者は邪魔な存在でしかなかったんでしょうね。

なにぶんにも昔のことなので、あやふやなコメントになり、申しわけありません。
Posted by 河村2:50 at 2011年02月02日 21:08
 河村さま、有難うございます。
 映画には、そのシーンはなかったと思いますが、http://d.hatena.ne.jp/K416/20060701/p2
>金町一家に雇われた佐藤殺害の実行犯は行動が完了するとすぐに警察に自首し、佐藤とは違う名前の人間を殺ったと告白した、と報道されている。
と紹介されているのを見つけました。
>代理人が行うこの種の暗殺は重罪であるにもかかわらず、法の抜け穴のおかげで重罪を免れることもある。
>人違いの殺人を認めたのであった。殺人罪よりも軽い刑を言い渡された。
だそうで、暗澹たる気持ちになりますね。誰が”市民”か?を決めるのは、「ヤツラ」という訳です。

 映画自体や纏わる事件は昔から知っていましたが、見たのは初めてだと思います。大きな街では何年か置きに見る機会があるようです。河村さまにもその機会が訪れるとよいのですが。

 そうそう、交流会で伺ったのですが、この映画のネガは国立フィルムセンターに永久保存されているそうです。なんでも富士の氷穴か何処かにあって、温度変化を防ぐために、倉庫の扉の開閉回数を制限しているそうな。
Posted by L at 2011年02月02日 22:39
>人違いの殺人を認めたのであった。殺人罪よりも軽い刑を言い渡された。

これは酷い話ですね。高度で緻密な計画性が認められるのだから、むしろ重罰で報いるべきです(まあ「人違いだった」と言われたらそれまでですが)。それから今の時代に「永久保存」と言えば、どこだか分んない場所に隠すよりも、英語字幕を付けてネットで全面公開する方が有効な気がします。尖閣ビデオと同じ作戦。ただし著作権や肖像権の問題はありますが・・・。
Posted by やきとり at 2011年02月03日 12:31
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