2011年01月26日

鹿

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DEER HUNTER/(Capitol)/1979

1978年にアカデミー賞を受賞した、ロバート・デ・ニーロ主演の映画『ディア・ハンター』のサントラ盤。ちょっと聴いただけだと、スタンリー・マイヤーズの書いた美しいメロディを軸に、ロシア民謡や賛美歌を背景に配置した、非常に内省的な音楽に聴こえるかもしれない。が、人間の心の深部に広がる暗がりを、ほのかに照らし出すような静謐な音楽は実に素晴らしい。

シンプルで控えめなストリングスをバックに、クラシックギタリストのジョン・ウィリアムズが美しいメロディを爪弾く「カヴァティーナ」で幕を開ける。昼間にTBSラジオを聞いている方なら、必ずや耳にしたことのあるメロディだと思う。ウィリアムズの名演によって、数多くのカバーを生むことになった名曲である。ほぼウィリアムズのソロギターだけでここまで引き付けるのがスゴイ。

まるでオーロラがゆらめくような混声コーラスの気高さに息を飲む賛美歌「プレイズ・ザ・ネーム・オブ・ザ・ロード」、街の雑踏の音をバックに陽気なポルカのリズムで奏でられる「トロイカ」、手拍子と共に子供たちが歌う「カチューシャ」を挟んで、ヘリコプターのホバリング音が重々しく響きわたる。雨雲のようなストリングスで場面は暗転し、オーケストラのアンサンブルが不気味な低空飛行を続ける「ストラグリング・アヘッド」。

ウィリアムズのソロギター「サラバンデ」は、まるでサティのようにシンプルだけど印象的なメロディを持つ曲。ウィキペディアをこっそり覗くと、この映画には有名なロシアン・ルーレットのシーンがあるそうだ。「ウェイティング・ヒズ・ターン」はおそらくその場面で使われた曲だと思うが、あくまで「カヴァティーナ」の変奏曲であり、それほど緊張感は無い。

賛美歌「メモリー・エターナル」は、まるで葬送曲のように沈鬱に響く。MLBワールドシリーズや大統領就任式などで誇らしげに歌われるのが常の「ゴッド・ブレス・アメリカ」だが、ここでは数人の男女が呟くように歌い(声はかすれながら)、眼前に荒涼とした戦場の風景が広がる。そして最後に「カヴァティーナ」の優しい旋律が現れ、アルバムをしめくくる。全体的に地味ではあるが、サントラらしいサントラなので私は好きな1枚だ。



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posted by やきとり at 11:40| Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
メインテーマの静謐さとクリストファー・ウォーケンさんの狂気の演技が印象に残ってる映画ですが、もう30年以上も前ですか。そりゃトシ喰うはずだ。
ウチの投手がそちらでお世話になるそうで、ルーキーイヤーだけ良かったんですが、故障したのとストライク入らないでKOされてベンチで泣いちゃう精神力の弱さが困ったちゃんのヒトですが、よろしくね。
Posted by うましかひ at 2011年01月27日 12:44
豪腕コメントに感謝です! 泣くって酷いなあ。ガラスのハートは大嶺だけで十分ですよ! まあ逆にこちら行った斎藤くん(前年までベイスターズ2軍捕手)は、キレのある変化球だと約80%を後逸するので油断なりませんが、ひとつよろしくお願いします。
Posted by やきとり at 2011年01月27日 18:49
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