2011年08月04日

わたすの

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トシコ旧友に会う/秋吉敏子(THINK!)/1961

24歳で渡米した秋吉敏子が60年代に一時帰国した際、旧友たちと録音したアルバム。

といっても、「昔はよかったね」風の手垢の付いたジャズを演奏しているわけではない。それは当時最先端だったモードジャズの代表曲「ソー・ホワット」を取り上げていることからも分る。マイルスがこの曲を最初に録音したのが59年だから、タイムラグは2年しかない。本国ですらモードを理解していないミュージシャンがゴロゴロいた時代である。もちろん手探り感は否めないが、逆に適度な緊張感が生まれて耳を引き寄せられる。

渡辺貞夫、宮沢昭、原田政長、富樫雅彦ら同僚や後輩たちを向こうに回して、おなじみのテーマを提示する。まずは秋吉のピアノが、夜のしじまに冷たく響きわたる。ビル・エヴァンスを思わせるタッチから始まって、次第に湿度と温度を上昇させていくソロはまるで青い炎。次に出る宮沢昭は探るように、効果的な音をヒットさせていく。そして渡辺貞夫のアルトが出た瞬間、空気がガラリと変化する。アイデアとイメージに満ちたソロはオリジナルに勝るとも劣らない。いや、最後まで持続する緊張感はオリジナルをも凌駕するかも。

スタンダードの「夜は千の眼を持つ」、パーカーの「ドナ・リー」、当時の夫チャーリー・マリアーノ作曲「ケベック」は、比較的オーソドックスなバップマナーの演奏だ。1曲目とは違って、ここではメンバー同士が交歓するようなリラックスしたプレイが聴ける。特に高速フォービートで駆け抜ける「ドナ・リー」は、チャーリー・パーカー直系の渡辺の独壇場と言っていい。後半の宮沢とのフォーバースも実にスリリング。当時の日本人ジャズミュージシャンのレベルの高さを窺い知ることができる。

ラスト2曲は秋吉のオリジナル。「オールド・パルズ」は、ゆったりと進行する優しいハードバップ曲。今度はハンプトン・ホーズを彷彿とさせる秋吉のブロックコードのソロが、時代を感じさせるバーボンウィスキーの味わい。最後の「わたすのビートウィン」は激しくリズム・チェンジを繰り返すアップテンポのフォービート曲。複雑怪奇なリズムをグイグイと前へ引っ張る猪俣のドラムスがカッコ良い。70年代に結成する敏子=タバキン・ビッグバンドが強烈に発散していた「ミンガスの体臭」を、早くもうっすら漂わせている。
さて一応ブログも書いたし、ぼちぼち職安でも行ってくるかな。

ソー・ホワット(10:50)/夜は千の眼を持つ(5:00)/ドナ・リー(5:50)/ケベック(6:17)/オールド・パルズ(5:01)/わたすのビートーウィン(7:10)
秋吉敏子(p)渡辺貞夫(as)宮沢昭(ts)原田政長(b)栗田八郎(b)富樫雅彦(ds)白木秀雄(ds)猪俣タケシ(ds)



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posted by やきとり at 09:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いま"トシコ旧友に会う"でGoogleしたら、Amazon,Wiki の次に親方のサイトが出てきました。非常に薄い(毛でないですよ)分野での話の所為か?どうやったらこれらを試聴できますかねえ?
毛を失う事には慣れているでしょうが(私は過去に解雇された事あります)、なるようにしかならん昨今、ぼちぼちやってください。
Posted by ! at 2011年08月04日 13:20
おほう、職安か。かっこいいなあ。
当方は、どうにか失業状態から抜け出しつつあり、といっても、例によって溢れ仕事を掻き集めて食いつないでいる境遇に変わりはありませんが。
Posted by 非国民 at 2011年08月04日 23:43
ジャズでもロックでも女性はピアノ、キーボードをやることが多いのは、体力的な問題、良家の子女のたしなみとして幼少時からピアノを習っていた延長、でしょうか。
ジェンダー音楽論に思いを馳せたり。
Posted by pulin at 2011年08月05日 05:56
>mtx殿
検索は新しい順に引っ掛かるから、時間が経てば下に落ちていきますよ。試聴を探したけど見つからんですなあ。youtubeにも無いし。まあ紹介しといて何ですけど、大名盤という程ではないので、あまり気にしなくていいかも(笑)。昨日は職安行ってきたけど、求人はそこそこあるものの、ここに来て運転免許が無いのがネックです。いいかげん観念して免許取るかなあ。あとケータイも。

>同志
職安は大賑わいでしたよ。タッチペン(?)で画面に触るとザザーッと情報が出る端末を30分ばかりイジってみました。これは、という求人があれば、ワンタッチで印刷も出来ます。今日も行って涼んでこようと思います。それにしても「要普免」ばかり・・・。

>pulinさん
リズム感は実は女性の方がスルドイのではないか、と常々考えてます。だから女性はドラムスとかパーカッションの方が向いてると思うんですよね。考えようによってはピアノも打楽器ですけどね。
Posted by やきとり at 2011年08月05日 08:10
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