2012年03月12日

王道

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ECO D'ALBERI(Porter)/2011

某ジャズブログで紹介されていたエコ・ダルベリ(?)なるグループの新譜。こんなジャケでは絶対に手が出ないが、HPで試聴したところ、イッパツで気に入って購入してしまった。

サックス、ピアノ、ベース、ドラムス(全員イタリア人)というスタンダードな編成だが、若い4人は旧態依然のフリージャズ大会を繰り広げる。いやはや、これが痛快痛快。意味ありげで実は無意味な「物音ジャズ」一切なし! ロックへの色目、一切なし! 小手先のエレクトロ導入、もちろん一切なし! あるのはTシャツとジーパンびしょびしょ系&体力勝負の、アコースティック、アナクロニズム、アッパー系(3A)なフリージャズのみ。

ひしゃげたようなサウンドで周囲を睥睨するテナーが、まず世界の中心で怒りを叫ぶ。これを取り囲み軽くジャブを入れつつ、様子をうかがう残りの3人。駆け引き、せめぎ合いがしばらく続くが、第1波、第2波、第3波と、次第に規模と高度を増す津波のように、やがて全てを飲み込む巨大波が押し寄せると、脇目もふらずドシャメシャ大会へ突入・・・と思いきや、間欠泉のような素早い小爆発を繰り返しつつ事態は平行線へ。するとベースのアルコ(弓弾き)ソロが抜け出す。ベースのアルコソロなんて、かったるい場合が多いんだけど、これがまるでエリック・ドルフィーが憑依したみたいなカッコ良いサウンド。テナーのエドアルド君も何も出来ないまま1曲目終了。まずはベースのアントニオ君の1人勝ちだ。

仕切り直しの2曲目。ジャブの応酬は相変わらずで、4人ともなかなか手の内を見せない。ここでピアノが主導権を取る。すぐさま反応するベースとドラムスが即席の共同戦線を張り、フォービートの幻影を見せながらピアノを責めたてる。この瞬間がカッコ良い。さらに、蚊帳の外に置かれたテナーが強引に割り込んできて、速いフレーズで時間と空間を強引に捩じ曲げる。断末魔の叫びをあげるピアノ。あまりの速度に質感が消えたリズムは、却ってあまりに激し過ぎるゆえに、まるで遠くから聞こえる工場のノイズのようにノドカに響く。

3曲目「コールズ」は30分を超える長丁場だが、嵐の前の静けさは無し。いきなり4人全員の殴り合いが始まる。いいぞいいぞ、もっとやれ! 開き直ったように絶叫するテナー。エドアルド君のテナーは、激辛でトゲだらけのアルバート・アイラーにクリームを加えてミキサーに掛けて食べやすく仕上げたようなサウンドだが、粒子が細かい分、じわじわと絞め殺されるその感覚に恍惚となる。ピアノ、ベース、ドラムスも力を抜かない。波の切れ間で沈静化しても持続する緊張感、そして次のアラシの予感。遠くから雷鳴が聞こえてきたかと思った次の瞬間、すぐさま暴風雨に飲み込まれる。エドアルド君はソプラノサックスに持ち替えて、今度はコルトレーンみたいなサウンドに変化する。鋭利な刃物を振り回すような危険さ。かまいたちと化したバンド全体が襲いかかり、聴いているこちらは全身びっしりと切り傷だらけ。演る方も聴く方も体力勝負なのだ。

アルベルト君のピアノも素晴らしい。この手の音楽を演る人にしては、それほど「俺が俺が」の人ではない。適所で適度に適宜な音を並べていく姿勢は、目をサンカクにして炎上しながらも、どこか醒めた目で音楽の行方を見守っているようなクールさを感じる。そんなアルベルト君が最後にキレるのが4曲目「アップ・トゥワード・ザ・サン」だ。出だしからギョロギョロギョロ、ギャロギャロギャロと鍵盤を波立たせ、テナーに真正面から対峙する。全身が怒りの炎に包まれたテナーに、冷酷な表情でせっせとガソリンを浴びせる時間がたまらない。そしてファブリジオ君のドラムもどこか冷静。ドシャメシャ大会に雪崩込んでも完全にパルス化することなく、どこかビートの芯が残っているとでも言えばいいか。フリーなんだけどグルーヴィなんだな、変な言い方だけど。とにかく60年代にタイムスリップしたかのような、王道フリージャズの好盤。フリー風味だけ取り入れた昨今の気取ったコンテンポラリー系などあっち行けしっし。

TUTTO CIELO(12:22)/RADICE(14:33)/CALLS(32:00)/UP TOWARD THE SUN(9:10)
EDOARDO MARRAFFA(ts,ss)/ALBERT BRAIDA(p)/ANTONIO BORGHINI(b)/FABRIZIO SPERA(ds)


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posted by やきとり at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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