2012年05月28日

スピリチュアル・ミスター・ホーズ

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RULES OF FREEDOM/NATHAN DAVIS(Polydor)/1968

マルチリード奏者ネイサン・
デイビスが、パリ時代の68年に録音したアルバム。近年レアグルーヴ方面で再評価されている人だが、本作はフォービートを基調にしたストレートなジャズ。ブルースあり、スピリチュアルあり、適度なフリーありと、バラエティに富む内容で飽きさせない。

一番注目されるのは、ピアノにハンプトン・ホーズが座っていること。良くも悪くもバド・パウエルの薫陶を受け、50年代初期からビバップとヘロインに身も心も捧げたホーズ。結局58年に逮捕&医療刑務所に収監され、ジャズが大きく変動を遂げた1960年前後の、ほぼ5年間を棒に振る。しかしホウズは浦島太郎にはならなかった。JFKの恩赦で放免されると、すぐにピアニストとしての活動を再開。押せ押せゴリゴリの息も詰まるバップピアノのスタイルから、ポップ曲を余裕を持って弾いて見せたり、ビル・エヴァンスごっこをやってみたりと、良くも悪くも芸風を大きく広げた。まあ復帰後のアルバム単位で言えば当り外れはあるけど、天才は転んでもタダでは起きないのは確か。

で、70年代のフリー〜スピリチュアルへの対応はどうか。エリック・ドルフィーのバンドに雇われたマル・ウォルドロンも器用な人だったけど、スタイルは首尾一貫、我が道を往くタイプだったし、意外性という点ではネイサン・デイビスとハンプトン・ホーズの組み合せに軍配が上がる。まず1曲目はタイトル通り、コルトレーンの「ベッシーズ・ブルース」みたいな爽快感のあるアップテンポのブルースで、ゴリゴリと弾き倒す。ホーズはブルース弾きの人だから、これは想定内。むしろ、ネイサン・デイビスの暑苦しいテナーソロがたまりません。

2曲目は一転、重心の低いアフロリズムを繰り出すアート・テイラーと、地を這うようなジミー・ギャリソンのベースリフ。そこへ時折、コードのクサビを打ち込むホーズ。そんな3人を尻目に、ソプラノに持ち替えたデイビスはひとり涼しい顔で、アラビアの空を軽やかに飛翔する。音を探りながら言葉少なに語るホーズのソロは、やや不完全燃焼気味か。再び軽快なフォービートで疾走する3曲目も、コルトレーンマナーのモード曲。アート・テイラーが、まるでエルヴィンが憑依したかのようなドラミングを披露すると、負けじとホーズもマッコイ・タイナーに変身。が、うまく化けたつもりでも尻尾が見えているのはご愛嬌。そしてフルートが短いリフを反復しながら、リズムと一体となって静かに熱を帯びていく4曲目。

イントロでジミー・ギャリソンのアルコをバックに、スピリチュアルなメロディが立ち現れる5曲目「愛は自由」は、続いて出る美しいテーマもため息モノのバラードだが、センチメンタルに流されることはない。男泣きの熱いテナーソロに続いて、ホーズも曲のムードを壊さないよう、慎重にコード主体のソロを組み立てていく。ギャリソンの太いベースのソロを挟んでテーマへ。そしてラストは「自由のルール」と題された高速フォービート曲。シンプルなテーマを吹き流した後、デイビスは「今日はこれでおしまい、全部出しますぜ」とばかり熱くブロウする。これに感化されたのがホーズ。バッパー心をくすぐられ、短いけれど火の出るような速弾きを披露。

ホーズ目当てに聴き始めたが、ネイサン・デイビスの暑苦しいテナーと、ある意味「らしくない」バネの利いたアート・テイラーのドラムスばかりに耳を奪われてしまった。


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posted by やきとり at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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