2012年08月05日

ミンガス

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CHANGES ONE/CHARLES MINGUS(ATLANTIC)/1975

今年は1度もエアコンを使っていない。リモコンにすら触れていない。おかげで暑さにも慣れた。人間何とかなるものである。今日はさらなる逆療法で、朝から暑苦しいジャズばかり聴いていた。中でも久々に聴いたミンガスのコレがグッと来たので、感想文を書いてみる。

数多いミンガスのアルバムの中でもイマイチ注目度は低いが、文句なしの傑作だと思う。なにしろ、この時代のバンドにはジョージ・アダムスとドン・ピューレンがいる。2人して御大の薫陶を受けまくっていた時だ。ミンガス亡き後、直系のミンガス魂後継者はこの2人で間違いないだろう。もっとも、この2人もいまはこの世にいない。

ミンガスの新曲「アッティカ刑務所事件のロックフェラーを忘れるな」で幕を開ける。グロテスクでおどろおどろしいテーマを持つ「フォーバス知事の寓話」タイプの曲を期待していると、軽快なフォービートで疾走するハードバップに意表をつかれる。ただしアダムスはおとなしく型通りのソロを披露するも、ピューレンは次第に本性をあらわにしていき、軽いフリー大会へ突入。それでもいい塩梅のドシャメシャ加減なので、フツーのジャズだ。そう、こういうのがフツーのジャズなのよ。新録もののピアノトリオなんか聴いて「やっぱりエヴァンス派はいいねえ」などと気取ってるようなオッサンは、ジャズファンとは呼べないのだ。全身まっくろで、グロテスクで、ダーティーな音を振り撒きながら暴走するタグイの音楽。それがフツーのジャズなのである。「エヴァンス派」を聴くくらいなら、エヴァンスを聴けばいい。

ミンガス作のバラードは、全部が全部、いかにもエリントンが書きそうな曲に聴こえる。それだけエリントンに心酔、尊敬している証拠だ。それでいいのだ。2曲目の「スー・グラハムの変化」は、最初美しいバラードの顔をして現れる。ただし油断禁物。すぐにフォービートとドシャメシャの波状攻撃が始まり、ああ、もうたまらない。本作のハイライトはこの曲だろう。そして「悪魔のブルース」だ。タイトルも良いけれど、ダミ声で歌いまくり、吼えまくるアダムスが最高。美は乱調にあり。芸術は爆発だ。下品な食い物の方が旨い。ツンとすましてお高くとまったジャズに呪いあれ(まあ別に聴かなければいいだけの話だが)。それにしても、アダムスのシャウトを聴いていると、全身の血がフツフツと沸騰していくのが分る。そして後半のカッコ良いリフが飛び出たところで、思わず拳を宙に突き上げ「イエー!」と叫んでしまう。誰もいない薄汚いアパートの部屋で、汗と共に加齢臭を発散させながら。

ラストは「敬愛するエリントン・サウンド」。もう見栄もへったくれも無い、ストレートなタイトル。ひと目もはばからず「エリントン愛」を内外に公言する屈託のなさが可愛い、しかもあの顔で。ここは種も仕掛けもない辛口バラード演奏に終始する。このリリシズムはエリントンの「ソフィスティケイテッド・レディ」を超えたのではないか。メンバーのソロは他の曲と比較すれば確かに「まっとう」だが、甘さに流れない硬派な展開。スーッと溶けて、大いなる感動と爽やかな聴後感だけが残る。

REMEMBER ROCKEFELLER AT ATTICA(5:56)/SUE'S CHANGES(17:04)/DEVIL BLUES(9:24)/DUKE ELLINGTON SOUND OF LOVE(12:04)




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posted by やきとり at 18:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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