2012年10月03日

やたがらす

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YATAGARASU/BRÖTZMANN-SATOH-MORIYAMA(NOT TWO)/2012

夜中に演説するのもどーかと思いますが、これだけは言いたい。いいですか皆さん。ペーター・プロッツマン、佐藤允彦、森山威男のトリオ作品ですよ。しかも昨年11月、ポーランドで行われたピカピカのライブ盤なんですよ。それなのにほとんど話題になっていないのはなぜでしょう?

かく言う私も、いつも訪問しているジャズブログで知った。さっそく購入しようと久々にネットショップをチェックするも、アマゾンにもタワレコにも無い。HMVにはあるが、トップページのニュースで取り上げて然るべき事件にもかかわらず、ひっそりとカタログに載せているだけ。しかも「お取り寄せ 14-20以内に入荷予定」となっている。それならばいっそと、ユニオンで入手。さっそく聴いてみる。

おおお、冒頭の「ヤタガラス」から、我先にと全力疾走だ。ただしブロッツマンについて言えば、コンクリートの塊で遠慮会釈なく頭や顔を殴りつけるようないつもの残虐さはナリを潜め、山下洋輔トリオみたいな「笑い」の味がほんのりとする。さらに演歌の匂いまでするのは、佐藤允彦の弾くコードのせいだろうか。冗談とも本気とも取れそうな和テイストな導入部が終ると、息つく間もなく、お待ちかねのドシャメシャ大会へと突入。切れ目なく轟く雷鳴のようなブロッツマンのテナー、激しく叩きつける雨しぶきのような佐藤のピアノ、それら荒れ狂う「お天道様」に対抗するかのように、不穏な地鳴りを繰り返す森山のドラムス。

この手の音楽を演奏する時でも、佐藤のピアノはどこか抑制が利いている。山下と同じように鍵盤をギャロンギャロンとやっても、聴き手の実際の体感温度は確実に10°Cは低い。佐藤さんはインテリだしね。嫌いじゃないけどね。ただ、共演のピアノが誰であろうと変わらないのが森山威男。やはりこの手の音楽を演奏する時は、叩いていない時以外は全部ドラムソロ。シンバル類で細かなパルスを送り込みつつ、タムやバスドラで大地震を引き起こす。「ヤタガラス」が26分超、次の「アイシー・スピアーズ」が30分半。よく疲れないなあ。

一方、ブロッツマンの表情は常にやさしい。むろん「やさしい」と言っても、いつものブロッツマンよりは、という意味であり、ドスの利いたブロウの波状攻撃に、いつの間にか私の内耳と脳内は心地良い疲労感でビッシリと満たされる。お、2曲目「アイシー・スピアーズ」の26分辺りから、再び演歌が始まったぞ。今度は佐藤に煽られるのではなく、ブロッツマンみずからサム・テイラーもどきに成り切っている。これは確信犯だな。ゲラゲラゲラ! 最高!

3曲目「オータム・ドリズル」は7分と短いが、無機質な巨大な鉄塔を思わせる現代音楽チックな佐藤のピアノのイントロから始まって、時速100kmで飛ばすロードローラーにまたがった森山がねじり鉢巻で乱入、最後に巨大なクワを振り回しながらブロッツマンが現れすべてを破壊する。バンドのショーケースのような小品。ラストの「フローズン・ホイッスル」は3分間の物音ジャズ。おまけみたいなものかな。とにかく不気味な余韻を残したまま終るが、全体的に聴きやすいのが意外だった。ところで佐藤+森山のコンビといえば、宮沢昭の大名盤『木曽』(1970)を思い出す。

YATAGARASU(26:20)/ICY SPEARS(30:34)/AUTUMN DRIZZLE(7:15)/FROZEN WHISTLE(3:24)
TAKEO MORIYAMA(ds)/MASAHIKO SATOH(p)/PETER BRÖTZMANN(as,ts,TAROGATO,B♭-CL)



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posted by やきとり at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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