2013年03月03日

フラッシュ・アップ

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フラッシュ・アップ/森山威男カルテット(THINK!)/2013

最近、森山威男の旧作がやたらとCD化されている。一昨年コロンビアから出たオンデマンドのCD-R盤を買ったばかりの『スマイル』も、リマスターされたプレスCDが出やがった。お気に入りの盤なので以前ならすぐに買い換えるところだが、個人的には「アベノミクスって何?」という経済状況のため、強いて頭から追い払う。しかし本作は無視するわけにはいかない。同時発売の『ハッシャバイ』は聴いたことがあるが、森山の初ソロ作『フラッシュ・アップ』は未聴なのだ。1977年3月1日に新宿ピットインで行われたライブの実況中継盤。

能書きはやめて単刀直入に行く。想像以上に素晴らしい音楽だった。文字通り、手に汗握ってCDを聴いたのは久しぶりだ。全3曲、まずは冒頭の「フラッシュ・アップ」でいきなり絶頂に達する。板橋文夫の曲だが、これはもう「インプレッションズ」のバリエーションですね(「インプレッションズ」も「ソー・ホワット」だけど)。それにつけても相変わらず「演奏中は全部ドラムソロ」の森山威男の暑苦しさよ(ほめ言葉)。さらにその森山にこれでもかと煽り立てられた高橋知己のソプラノサックスが激しく回転して高熱を発する。からむ板橋文夫のピアノは火炎放射器、野太い望月英明のベースも重量級。ステージ上は灼熱地獄。うーむ、このエネルギーでタービンを回せば、原子力以上の発電が期待できそうだ。ピアノソロに移って板橋の狼藉ぶりは言わずもがな。18分超の長尺だが、あっという間に聴き終る。

お次はスタンダードの「朝日のようにさわやかに」が出る。ドラムとテナーの掛け合いからフォービートへ。テナー、ピアノとソロが回るが、高橋の影響なのか、板橋までマッコイ・タイナー風になっている。もっともこのアルバム全体に言えること、ジャズ好きに何も言わずに聴かせたら、60年代中期のコルトレーン・カルテットのライブだと勘違いするだろう。高橋知己の演奏を久しぶりに聴いたけれど、やっぱりこの人は世界一コルトレーンに似ている。

早くもラスト、板橋文夫のオリジナル「イエロー・ベア」は、王道のメジャーブルース。ミディアムテンポのフォービートながら、たっぷり時間をかけてジワジワと、きっちり沸点まで持っていく。望月英明の堅実なウォーキングに支えられ、ここでも森山は全部ドラムソロ。しかし私は高橋のテナーに耳が引き寄せられた。派手さは無いけれど、サウンドも節回しも実に魅力的だ。さっきコルトレーンに似ていると言ったが、土着というか日本的というか、どこか東北地方の田んぼの土の匂いがするのだな。こういうサウンドは、本家アメリカのジャズでは聴くことができない。というわけでこのアルバム、衝動的に記事をアップしてしまうほど良かったのです。さて、ボリュームを上げて、もう1回聴くとするか。

フラッシュ・アップ(18:13)/朝日のようにさわやかに(14:59)/イエロー・ベア(8:09)
高橋知己(ts,ss)/板橋文夫(p)/望月英明(b)/森山威男(ds)


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posted by やきとり at 15:30| Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつもいけてる情報を有り難うございます。
これ、きいてみたいですねえ。
私の実生活の環境では、ちょっと巡り会えない内容なので、うらやましい限りです。
私は明日で45の真性中年になります。
今度(いつなんだろか?)日本で安ウマ飲み屋に行きましょう、ナメダルマ親方。
Posted by いいねえ、おやっさん at 2013年03月08日 13:23
おお、久しぶりっす。ひと月くらい前にモミーと飲んでウワサしてたんだけど、FBヤメちゃったの? 「またパツキンとトラブったのかもな」と2人で妄想たくましくしてました(笑)。mtx殿はついに45ですか。いわゆる「四捨五入すると・・・」の領域突入おめでとうございます。こっち戻ってきたらいつでも声掛けてください。馬場でも行きましょ。

それはともかく、これ表面的に聴く限りではコルトレーン・カルテットです。ヴィレッジヴァンガードとか、至上の愛とか、そういう時代のマナー。ただコルトレーンと違うのは「神がかり臭」が無いところ。どっか東北地方の祭ばやしなんですね。コルトレーンの正しい翻訳版というか、オリジナルとはまた別物の説得力があるというか。
Posted by やきとり at 2013年03月09日 12:52
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