2013年11月04日

同じCDを何度も買わされる屈辱

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やれボートラだの、やれリマスターだの、やれ紙ジャケだの、同じ内容のCDを、何度も何度も買い直させられている御同輩の皆様、おつかれさまです! まあ私の場合、リマスターと紙ジャケはどうでもいいのですが、ボーナストラック(ジャズだと多くは「別テイク」)は、やはり気になる。それでも以前ほど貪欲ではなくなったのだが、50年近く前のブルーノートの大名盤に、いまさら別テイクが発見されたとあっては、無視するわけにはいかないのだ。

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今回の再発では5枚の名盤(もしくは有名盤)に、「世界初登場トラック」が収録されているが、個人的にはずーっと手放さず愛聴してきたこの2枚に尽きる。ちなみに『サムシン・エルス』と『モーニン』と『ブルー・トレイン』は、いま手許には無い・・・持っていないCDではなく、すでに持っているCDを買わされる屈辱!

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まずはエリック・ドルフィー『アウト・トゥ・ランチ』から。緻密に設計、大胆に構築された無機質な建造物のようなレコードである故、これまで別テイクや別曲はまったく存在しないとされてきた。起承転結、序破急、これ以上何も足せない何も引けない、完璧な5曲のはずだった。でもあったんですね、別テイク。さっそく聴いてみると、本テイクにも見劣りしない出来栄え。あえてケチをつけるなら、「ハット・アンド・ベアード」のアンサンブルの途中、ソロに入るタイミングを間違えたドルフィーが、まだテーマの最中なのに「プーッ」とフライング。それに釣られたか、動揺したボビー・ハッチャーソンの叩くコードが一瞬グラつくがすぐに持ち直す。それもスリリングでよし。後に出るフレディー・ハバードのソロは、むしろ別テイクの方が勢いがあるように思えた。

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そしてウェイン・ショーター『スピーク・ノー・エヴィル』である。こいつも完璧な6曲だったのだが、15年ほど前に登場したRVGリマスター盤に「ダンス・カダヴェラス」の別テイクが収録されて話題になった。私が持っていたのもこの時のRVG盤である。しかし今回、さらに看板曲である「ウィッチ・ハント」を含む2曲が追加された。これもさっそく聴いてみる。イントロのファンファーレのようなアンサンブルはやや荒っぽいが本テイクと同じ。それが終ってエルヴィン・ジョーンズがシンバルでフォービートを刻み始めるのだが、これがテンポが1.5倍、いや倍近くあって驚かされる。ウィントン・マルサリスを含むジャズ・メッセンジャーズの「アルバム・オブ・ザ・イヤー」(81年)で演奏された同曲と似たテンポである。いいぞ、高速バージョンの「魔女狩り」、超カッコいい! ショーターのソロも荒削りで奔放だ。思わず興奮してしまったが、このアルバムに漂う魔術的で妖しい雰囲気を壊さないためには、もう少し遅いテンポの方が良いと判断されたのかもしれない。

それにつけてもフレディー・ハバード(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、ハービー・ハンコック(pf)、ロン・カーター(b)と来て、ドラムはトニー・ウィリアムスではなくエルヴィンなんだよなあ。本作だけではなく、ブルーノートのショーターのリーダー作にトニー・ウィリアムスのクレジットはほとんど無い。実は2人は仲悪かったのかしら? という冗談はさておき、多少リズムが綻びようが前へ前へとイケイケで突っ走るトニーより、より横揺れ重視のエルヴィンのドラムの方が、ショーターの曲には合うのだろう。

というわけで、いままでお世話になったRVG盤2枚には、次回のCD裁判で「死刑」が言い渡されるであろう。いや、ちょっと待てよ。RVG盤といえば、ルディ・ヴァン・ゲルダーが録音した音源を、ヴァン・ゲルダー自身が50年後にリマスターした貴重な音源である。いくらボートラが入ってるとはいえ、音質的には2013年リマスター盤より上かもしれぬ。いやしかし、普段は3000円のラジカセでCDを聴いている人間が、音質について語る資格があるのか。まあいいや、ではもう一度、「帽子とヒゲ」の別テイクから聴き直します。
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posted by やきとり at 11:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あれ? ツイッターの感じだと、てっきり大好評「会話シリーズ」が来るかなと(笑)

手持ちのCDを「上書き」買いする屈辱、全く同感です。
ただ、ボーナストラック満載だと、つい買っちまいますわね。
Posted by 百田田樹 at 2013年11月05日 00:20
ま、まま、まさか、NHK経営委員の愛国者の方からコメントを頂けるとは、ヒデキカンゲキでございます! ツイッターまでチェックされているとは、アメリカ様の指導のもと、我が政府も中国のようにネット監視を強めている現在、私も油断できませんNE! 何言ってんの俺?

というわけで、そこまで仰ってくださるのでしたら、久々にくだらない漫才でも書いてみる気になってきました。なんとか今週中にアップする予定ですが、ダメだったら甘んじて「百叩きの刑」を受けますYO!
Posted by やきとり at 2013年11月05日 22:49
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