いまや首都圏のどの駅前にも、王将や日高屋などの中華チェーンが立ち並ぶようになった。「餃子でビールでも飲もうかな。あとレバニラもいっておくか」という気分になった時、私もその手のチェーンを利用することが多かった。最近はもっぱら「家呑み」なので足が遠のいているが、ある時ふと思い出したのが、昔からある街の中華屋である。学生の時は行きつけの中華屋が4、5軒あったものだ。「ラーメン」の白文字を染め抜いた油の染みた赤いノレンをくぐると、左手にカウンター6席、右手に4人掛けのテーブル席が3つ、店の右奥にはビールやジュースを収めたガラス張りの大きなケース、その上には14型テレビが鎮座している。客はいない。
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